それまでは一度もけがをしたことがなかった。安心して預けられない気持ちが強まり、転園を決意。入園からわずか1カ月後のことだった。自宅そばの認証保育所に空きが見つかったため、そちらへと移った。

「退園時、看護師と保育士が3人同時に辞めるとの掲示がありました。3月にも保育士が数人辞めたそうです。認証保育所に移って保育料は数千円高くなりましたが、後悔していません」

 小さなけがならまだよいが、骨折などの大けがや死亡事故も、保育の現場で起きている。

 内閣府が12日に発表した集計によると、保育施設での重大事故は、昨年1年間で計587件あった。一昨年と比べ約1.5倍に増えている。

 587件のうち、458件が骨折で大半を占める。死亡事故は13件で、年齢別にみると0歳7人、1歳4人、6歳2人。10人は睡眠中の事故で、うち4人は「うつぶせ寝」だった。

 うつぶせ寝の危険性は、これまでも繰り返し指摘されてきた。事故を防ぐガイドラインも作られている。ある保育園関係者は「いまだにそんな事故があるなんて信じられない」と話す。

 東京都内にある事業所内保育所「キッズスクウェア日本橋室町」でも2016年3月、1歳2カ月の男児がうつぶせ寝で亡くなった。

 都が設置した検証委員会の報告書によると、施設長は保育経験がまだ浅く、当初は就任を断った。園の運営会社からサポート体制を約束されて引き受けたが、「サポート体制や職員の専門性の向上を支える体制が不十分」だったという。

 事故が起きた日、男児は昼寝中に目覚めるとの理由で、別室で一人うつぶせで寝かされていた。長いこと起きないので職員が確認をしに行くと、すでに心肺停止状態だったという。

 検証委は報告書で事故原因について、経験の少ない職員構成や、窒息のリスクに関する知識の不足などを指摘している。

 死亡やけがなどの事故の一方で、園児を部屋に閉じ込めて拘束するなど信じられない実態もある。

次のページ