ある閣僚経験者が4月下旬、官邸で安倍首相にこう尋ねた。
「首相は信頼しているようですが、この人(麻生氏)、大丈夫ですか」
安倍首相は笑顔でこう断言したという。
「1割、(再登板の)気持ちはあっても、それ以上ではないよ」
だが、安倍首相の読みは外れつつある。
「小さな派閥が乱立するより大きな派閥が必要だ」
副総理でもある麻生太郎財務相は5月15日、自ら率いる麻生派が山東派などを事実上吸収合併することで合意した意義をこう強調した。
都議選後の7月に約60人の新派閥を結成する段取りで、最大派閥、細田派(96人)に次ぐ勢力になる。安倍一強が続き、久しくなかった派閥再編がにわかに慌ただしくなった。
翌16日、「反主流派結集」と注目を集めた勉強会が発足した。約20人の自民党議員が集まり、野田毅・前党税制調査会長や村上誠一郎・元行革相ら政権と距離を置くベテラン議員が中心で、野田聖子・元総務会長の姿も見られた。
村上氏は本誌に勉強会立ち上げの趣旨を憤りを込めこう語る。
「改憲より政治的に喫緊(きっきん)の課題は財政や金融政策、社会保障の立て直しです。日銀保有の国債に値が付かないぐらい危ない状態で、アベノミクスは完全に破たんしている。財政再建に全精力を注ぐべきなのに、厚生労働省は年金マネーである年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でクラスター爆弾をつくる米企業に株式投資している。首相の優先順位は明らかにおかしい。出口が見えない財政・金融再建に大変な危惧を感じている」
集まった議員に共通しているのは「2度先送りした消費増税への不満の受け皿になる」(村上氏)こと。 あるベテラン議員はこう見立てる。
「野田毅、村上らは経済産業省主導の官邸に不満が大きい財務省の意向を受け、首相が3たび消費増税見送りをしないよう釘を刺した形だ。裏で自身の再登板を視野に政局含みで麻生氏がシナリオを描いているのは間違いない」