カムバック・セッションズVol.3
カムバック・セッションズVol.3
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びっくり!!これは本当にあの《シャウト》なのだろうか?
Comeback Sessions Vol.3 (So What)

 2008年初夏、またしても強力な未発表セッションが登場した。マイルスの復活をテーマにしたソー・ホワット・レーベルのカムバック・セッション・シリーズも3枚目を迎えてそろそろ息切れかなと思っていた矢先の朗報。特に帝王復活を検証しようと目論んでいるワタシのような人間にとって、今回の発掘は前2作を上回る。最大注目は1枚目に51分にわたって収録された《シャウト》のセッションだが、これ、本当に《シャウト》なのだろうか。冒頭数秒の雑音を経て現れる超高音質のポップな演奏、たしかに《シャウト》の変形ヴァージョンに聞こえないことはないが、まったく別の曲ではないか。あくまでも推論だが、「1981年5月録音」ではなく「1980年5月」に行なわれたセッションかも。つまり《ザ・マン・ウイズ・ザ・ホーン》と同時期のセッション/録音。メンバー構成も辻褄が合い、タンバリンなどのマイルスにしては珍しい打楽器のオーヴァーダビングなどもこの時期ということなら納得がいく。とするなら曲名は《スペース》《ソラー・エナジー》《スパイダーズ・ウェブ》《トラディション106》《アイム・ウォーキング・オン・ア・クラウド》《ライフ・エイント・ナッシング・バット・ア・パーティー》あたりのどれかということか。ともあれ最高音質での驚きの発掘に拍手。

 ここで話は変わるが、マイルスの復活にピート・コージーが深く関係していたことはあまり知られていない。ちなみに1979年、コージーがマイルス宅で行なったセッションが、翌年のシカゴ連中との(復活を前提にした)シークレット・セッションの導火線になる。コージーがマイルス宅で行なったセッションのメンバーは、コージーとウォーレン・ビンガムの2ギター(ウォーレンはコージーが推薦したシカゴ出身の若手)、ロン・ジョンソン(ベース)、ドニ・ハーゲン(ドラムス)、そこにポール・バックマスターが参謀として加わる。マイルスはこのグループでスタジオに入るつもりだったが体調を崩してキャンセル、復活はさらに遠のく。数か月後、マイルスはコージーに甥のヴィンス・ウィルバーンとその友人ランディ・ホールの音楽的面倒をみるよう依頼、それが発展して1980年5月の《ザ・マン・ウイズ・ザ・ホーン》のセッションにつながった。そういう意味からもこのセッションは貴重。しかしコージーが消えたのは惜しい。なお2枚目はボストン「キックス」での復活ライヴで、意外にも初登場の初日。最上ではないが悪いわけでもなく、十分に納得のレヴェルに達している。

【収録曲一覧】
1 Session Of Shout
2 Aida
3 My Man's Gone Now
4 Back Seat Betty
(2 cd)

1:
Miles Davis (tp) Bill Evans (ss, ts, fl) Robert Irving (elp) Randy Hall (synth, elg) Barry Finnerty (elg) Felton Crews (elb) Vincent Wilburn (ds) Sammy Figueroa (per)

2-4:
Davis (tp) Evans (ss, ts, fl, elp) Mike Stern (elg) Marcus Miller (elb) Al Foster (ds) Mino Cinelu (per)

(1):1980/5 (date unknown) or 1981/5/6 (NY)
(2)~(4):1981/6/26 (Boston)