関西でもう一つユニークなのは、早稲田大と慶應義塾大に対する見方だろう。
全国でみて、早大の合格者は約1万6千人、慶大の合格者は約9千人。早大は慶大の約1.8倍だ。都道府県別にみると、慶大のおひざ元の東京都や神奈川県を除くと、東日本では早大が慶大の2倍超の県が多く、早大志向が強いと言える。
一方で、近畿2府4県をみると、京都府1.6倍、兵庫県1.3倍など大阪府以外は1.3~1.6倍。全国平均と比べ、近畿は慶大志向が比較的強いようだ。
「近畿のなかで、地元住民にとって早稲田に代わる難関私大はあっても、慶應は代わりの存在が見当たらない。ブランド力や卒業生組織の三田会など、独特の魅力がある」(石原さん)
男女の進学率に戻ると、鹿児島県は、女子の4年制大学進学率が27.3%と全国で最も低い。昔は男尊女卑の風潮が強かったとされる地。数年前、知事(当時)が教育に関する会議で「高校教育で、女子にサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言し、後に撤回する騒ぎがあったことも記憶に新しい。
鹿児島のもう一つの特徴は東大志向の強さ。東大と京大の合格者比率をみると、福岡県は京大が東大よりやや多いのに対し、鹿児島は東大8割、京大2割と逆転する。
東大志望者の多いラ・サール高校の存在が一因だろう。ただ、隣の宮崎県も東大7割、京大3割の比率でともに東大志向が強い。岩中さんの見方はこうだ。
「鹿児島と宮崎はかつての薩摩藩。長州藩とともに明治維新を進めたが、長州のほうが政治的にうまく立ち回り、薩摩はその後冷や飯を食った感がある。それを乗り越えようと、日本の中心地の東京でがんばろうとする意識なのかもしれない」
戦後、山口県出身の首相は現在の安倍晋三氏を含めて3人。鹿児島はゼロだ。
『帝国大学』などの著書がある天野郁夫・東大名誉教授は、明治維新後の薩摩で、上京遊学を支える「造士会」、旧制第七高等学校前身の「造士館」がつくられたことを指摘し、こう述べる。