カラーコピーと判明した版画。美術界も「フェイク」に注意だ
カラーコピーと判明した版画。美術界も「フェイク」に注意だ
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 誰の仕業なのか。神奈川県は所有する棟方志功の版画が、カラーコピーのレプリカにすり替わっていたと4月17日、発表した。

 2014年5月、県立近代美術館鎌倉別館で開かれていた展覧会で、観覧者から「レプリカではないか?」と指摘され、事態が発覚したが、県は3年間、事実を公表してこなかった。

 公表しなかった理由について、黒岩祐治知事は会見で「どこかにしまい忘れているという思い込みもあったと聞いている」と説明したが、あまりにお粗末だ。

 この版画は「宇宙讃(神奈雅和の柵)」(縦約50センチ、横約65センチ)という作品で、横浜市の県民ホールの開館に合わせ、緞帳(どんちょう)の原画として制作を依頼したという。1974年10月に棟方から300万円で購入し、県民ホールの館長室に飾られた。県文化課の職員がこう話す。

「版画は、県民ホールの管理者である神奈川芸術文化財団に県が無償貸与していた形でした。その後、14年4月から近代美術館で新しく収蔵した作品の展覧会があり、この版画も一般公開しようと、近代美術館鎌倉別館へと運ばれましたが、指摘されるまで学芸員も気づかなかったようです」

 コピーされた版画は天地が逆さまに額に貼り付けられていた。すり替え時のミスを隠すため、額をつり下げるひもの位置を変えて、額縁を逆にして展示していたこともわかっている。

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