小島案の大胆さには、多くの市場関係者が度肝を抜かれた。そもそも現地再整備は1990年代にも試みられたが、業者間の調整が難航。工事の長期化で費用も約3400億円に膨れ上がるとされ、途中でとん挫した経緯があったからだ。“激安”改修は本当に可能なのか。小島氏は8日の説明会でこう断言した。
「築地の人々が、築地で営業を続けたいという気持ちがあれば、できます。建築技術的には、何ら問題はありません」
小島氏によれば、市場の取引規模が今より大きく「右肩上がり」の成長が予測された90年代と今とでは、状況が異なるという。
築地の改修手段は、市場をいくつかの区画に分けて数年ごとに順番で行う「ローリング工法」。工事中の区画にあたる業者は市場内に設けられた「タネ地」の仮設店舗にいったん移るが、業者数が減った今では「タネ地」の確保が容易になり、当時より少ない区割りで工事が行えるという。
アスベスト除去などの技術も20年前より大きく向上したことなどから、安く速い改修が可能だという。
さらに、現在のアーチ状の形状が改修後も残るため、豊洲で「不便だ」と業者から疑問視された物流の動線が、基本的に今のまま維持される。アーチ部分に新たに観光客専用の見学通路を設ける案も示された。
豊洲移転に反対する東京中央市場労働組合の中澤誠・執行委員長がこう語る。
「物流にかかわる立場としても、動線の流れを維持することにリアリティーを感じた。そもそも豊洲市場については、業者に対して今回のような説明やヒアリングを一度もしないまま決められてしまい、建物が完成して初めて動線や使い勝手に問題があることがわかった。事前に今回のようなプレゼンがあること自体に感動した。小島案を元に、業界の意見を聞きながら細かい点を詰めていけばいい」
一方、小島氏は豊洲市場について辛辣な未来図を示した。維持管理費が高額になることなどから市場会計は毎年100億~150億円の赤字となり、将来は業者から徴収する使用料の値上げや、多額の税金投入が必要になるという。