コンプリート・メルボルン
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超強力・最高音質のメガ名盤、ついに完全版で登場!
Complete Melbourne (Cool Jazz)

「マイルスは70年代まで。でもまあ80年代も音質と内容がいいのがあれば聴いてみてもいいかな」と思っているそこのアナタ、迷わずこの2枚組を手に取っていただきたい。返金覚悟で強く激しくお勧めしよう。この名盤、かつてメガ・ディスク盤『ディープ・ダウン・アンダー』として出ていた。しかし最後の最後で尻切れトンボという画竜点睛を欠く仕上がり、それがこのクール・ジャズ盤では完全収録、しかもただでさえ良かった音質もさらにタイトにヴァージョンアップ、これぞ最強の80年代アイテムといっていいだろう。

 さあさあやってきました《イン・ア・サイレント・ウェイ》に《イントルーダー》の潔きオープニング。ブート史上、リッキー・ウェルマンのドラムスの細かい動きがこうも鮮明に捉えられた例はほとんどない。新任ベニー・リートヴェルドの粒の揃ったベースもクリア。マリリン・マズールの種々パーカッションもくっきり。ともあれブートはむろんオフィシャルも含めて、ここまで高水準のものはそうはないだろう。やや気になるのはシンセサイザー過剰のアレンジか。マイルスは当初ロバート・アーヴィングの才能を買っていたが、このころになるとアーヴィングは一歩退き、代わってアダム・ホルツマンが右腕となる。ちなみにアーヴィングはやがて退団、ジョーイ・デフランセスコが参加しての2キーボード/シンセ時代を迎える。

 本作で注目の新曲《ヘヴィー・メタル》はマイルスとホルツマンの共作。しかしこれがじつにどうってことのない曲で、ほぼすべて書いたであろうホルツマンの才能の限界とマイルスに対する理解度の浅さがもろに表れている。派手にやればマイルスが喜ぶと思ったら大きなまちがい。そう、たしかにマイルスは派手好みではある。だがマイルスにおいては、ただ派手なだけではダメ、そこに風格や品位といったものが求められる。

 最大の聴きものは、きっちりとアレンジされた枠組のなかで、その枠を破壊もしくは変形させるようにマイルス以下メンバーが自在に即興演奏をくり広げつつ突進していく疾走感。これは枠組がしっかりと安定しているからこその冒険であり、だからこそ生きる即興なのだ。たとえば7・9・14・16といった『TUTU』の収録曲は、このバンドでしかありえない展開になっている。そこを聴き取ることが、このバンドを聴くということなのだ。ラストの《ポーシア》の最後の一音までたっぷり2枚組、そのスリルとマイルスの"タイミング芸"を思う存分、しっかと体感していただきたい。

【収録曲一覧】
1 In A Silent Way-Intruder
2 Star People
3 Perfect Way
4 The Senate / Me And You
5 Human Nature
6 Wrinkle
7 Tutu
8 Movie Star
9 Splatch
10 Time After Time
11 Heavy Metal
12 Don`t Stop Me Now
13 Carnival Time
14 Tomaas
15 Burn
16 Portia
(2 cd)

Miles Davis (tp, key) Kenny Garrett (as, fl) Foley (lead-b) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Benny Rietveld (elb) Ricky Wellman (ds) Marilyn Mazur (per)

1988/5/2 (Australia)

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