放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、資生堂の「インテグレート ビューティートリックアイブロー」について。
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ヘアアレンジやメイクを覚えたての若い頃、初めて使った道具や化粧品に「手が慣れてしまっていて」、以後、何年経っても、それらに頼りっきり……ということが女性にはあると思う。
たとえば私にとっては、「くるくる」だ。ドライヤーとブラシが合体している“カールドライヤー”といわれるモノで、シャンプー後、ヘアドライヤーで乾かした後、「くるくる」で髪を内巻きにしないと、どうしても落ち着かない。そこからホットカーラーやアイロンの出番になるのだが、実はアイロンは大の苦手。アイロンで上手にスタイリングできる若いお嬢さんのことが心から羨ましい。
そして眉だ。その昔、美容ジャーナリストらがこぞって「昭和の名品」と書いた資生堂の「レシェンテ ムーンカーブシャドー」が長年の愛用品だった。「これがなければ眉が描けない」と言う人は、私以外にも多かった。
ファンはとても多く、百貨店の資生堂コーナーで、軽く問い合わせしただけでも「ムーンカーブシャドーですか?」と美容部員さんが商品名を返してくれたほど。残念ながら、もう作られていないようだ。
以来、資生堂の商品で似たモノがないかと10年以上は探し続けたと思うが、やっと見つけた。「インテグレート ビューティートリックアイブロー」がそれだ。ノーズシャドーとアイブローの2色だった「ムーンカーブ~」とは異なり、ハイライトと、ブラウンのグラデーション3色の計4色からなる「インテグレート~」。眉にも、まぶたにも、鼻筋にも使える3役だ。
目鼻立ちゾーンに光と影を施し、立体感と小顔トリックをもたらしてくれる。いま、メイク室の鏡の前には必ず置いてあると言っても過言ではない人気商品である。
実は、件(くだん)の「ムーンカーブ~」と似ているのは、色味や、使えるパーツだけではないのだ。
片方は平たくて、まぶたや鼻筋に使えて、もう片方は、エッジの利いた短い毛先が特徴の“ブラシ”が酷似しているのである。
「これがなければ眉が描けない」と言っていた人たちは、茶色いグラデーションのシャドーの色ではなく、この短くて硬いブラシのことを指していたのだ。
このブラシに濃いシャドーを含ませ、眉頭に置き、スッと眉尻まで引けば、どんなに慌てている朝でも失敗はナシ。しかも「ムーンカーブ~」より、お安いというのも助かる。愛用者だった方には、絶対オススメしたい名品だ。
※週刊朝日 2017年3月31日号