将棋ソフト不正使用騒動に揺れた三浦弘行九段が、2月13日の竜王戦予選トーナメントで復帰戦に臨む。
対局相手は将棋界に君臨する羽生善治三冠。三浦九段と羽生三冠は、過去の対局や今回の一連の騒動など“因縁”深い。
対局は人気インターネット動画サービス「ニコニコ生放送」で生中継される。実力者2人の対局とはいえ、タイトル戦でもなければ、挑戦権がかかるわけでもない。予選1回戦の放映は異例のことだ。
三浦九段を巡っては昨年、対局中に頻繁に席を立ち、スマートフォンを用いて指し手を調べているのではという疑惑が持ち上がった。第三者調査委員会の調査で疑惑が晴れたわけだが、動画の視聴者は、三浦九段の一挙手一投足に気を配るだろう。離席のたびに注目が集まるのは必至だ。対局は半日近く続く。背中がかゆくなるかもしれないし、トイレにだって行きたくなるだろうに……。
羽生三冠にもプレッシャーがかかる。「限りなく“黒に近い灰色”だと思います」とメールの内容が報道され、妻の理恵さんがツイッターアカウント上で釈明したことで、騒動が広がる結果となった。
三浦九段には4カ月のブランクがあるが、元「将棋世界」編集長の大崎善生さんは、
「今回の一件は特別なケースではあるが、長期間のブランクはどんな棋士にもある。三浦九段はA級棋士の中でもトップクラスの強さを持つ。羽生三冠は経験値もあるし強いが、両者に圧倒的な差はない。お互いナーバスになっていると思います」
と解説する。
対戦成績こそ30勝8敗で羽生三冠が大きく勝ち越しているが、過去には絶好調時の羽生の連勝を止めている。1996年の棋聖戦では、“絶対王者”として圧倒的な強さを見せていた羽生七冠(当時)を下し、棋聖位を奪った。また、2013年にはA級で羽生三冠の連勝を21でストップさせた。
複雑な心境が絡み合う“因縁”の対局の行方やいかに。
※週刊朝日 2016年2月24日号