漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「奪い愛、冬」(テレビ朝日系 金曜23:15~)に出演した水野美紀について、ふっ切れっぷりがすごいという。
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思う存分ツッコんでくれ! 全裸で正座しながらツッコミ待ちしているような、このドラマ。
恋人・康太(三浦翔平)にプロポーズされた光(倉科カナ)。そんな時、かつて突然姿を消した元彼(大谷亮平)と再会。しかし彼には妻(水野美紀)がいた……と、一応ストーリーはあるけれど、だいたいいつも登場人物が叫んでいる。
結婚に反対する母親から「何か取り憑いてるんじゃないの?」と言われる三浦。いきなり真冬の海に飛び込んで、「うわあああ、俺は光が大好きだーっ!」と絶叫。そしてずぶ濡れで「俺、取り憑かれてなんかないから!」って、今すぐお祓(はら)いをお勧めしたいレベル。
すべてがコント状態で展開する中、ひと際輝きを放っているのが、嫉妬深い妻役の水野だ。バカリズム脚本「黒い十人の女」で、アングラ劇団「絞り汁」の女優(クセが強い)を演じて以来、何か脳内から絞り汁がほとばしり出てるかのようなふっ切れっぷり。
「うずくのぉ~! 右足がうずくのぉ~!」。通り魔から、夫をかばい負傷したという足の傷を晒し、夜ごと彼に迫る。「さすって~!」と言いながら足をからめ、夫の首を三角絞め(に見えた)で「離さないからね~っ!」って、なんのかんの絞りすぎ。夫役の大谷は「竹野内豊似」などと言われてるけど、女優の股で首絞められる役やってくれる竹野内似、たとえ棒読みでもドラマ的には尊いはず。
そんな夫にGPSを付け、行動を監視する水野。帰宅したら、靴の泥チェックを欠かさない。GPSで追尾し、倉科と会っていた現場を特定。ぬかるみに残る夫の足跡を撮影し、証拠物件である倉科の折れたヒールを回収するって、何、この科捜研の女。今すぐ2時間ドラマの主役になれそう。
そして、帰りの遅い夫を待つ水野。食卓に並ぶ、うなぎの蒲焼き、ニンニクまるごと揚げ、ニラレバ、とろろ、赤まむしドリンクを見つめて叫ぶ。「今日、排卵日なのにーっ!!」。こんなシーン、真顔でやってくれるのは水野だけ。
ドロドロしてるけど、キュンとする「ドロキュン」恋愛ドラマなんて称してる本作だけど、どこにキュンがあるのか、まったく見当たらない。ただただ水野がドロドロを絞り出すドロ絞りドラマ。あんまり絞りすぎて、結末が絞りカスになってないか心配。
※週刊朝日 2017年2月17日号