漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~」(前編・1月6日23:15~)が不倫ドラマなのに“おめでたい展開”だったという。
* * *
昨年は、正月から不倫ニュースが駆けめぐった。世間様の脳裡(のうり)に、それがくっきりと刷り込まれたのか、もう新年といえば不倫。てことで、年明けから「不機嫌な果実スペシャル」で、不倫始めなのだ。
マザコン夫・航一(稲垣吾郎)との夫婦生活に満たされず、元彼・野村(成宮寛貴)と不倫していたヒロイン・麻也子(栗山千明)。一方、夫も麻也子の女友達・久美と不倫中。と、登場人物はみな、不倫にノーブレーキな能天気揃いときたもんだ。ドロドロ、ごたごたの末、二人は離婚。そして麻也子は、年下の音楽評論家・通彦(市原隼人)と、晴れて再婚する……って、ここまでが連ドラのお話。
今回のスペシャル版は、その3年後。相変わらず、「私ってほんとに損してる……」と、現状の生活に不満を抱く麻也子が描かれる。ただし諸事情により(?)、成宮要素は、まったくゼロですよ。どこ行った、元彼・野村。東南アジア?
代わりに現れたゲスポジションは、脱サラして農業やってる一人DASH村男・相馬(山本裕典)。もうこのドラマの不倫に突入する速さたるや! 何かっつーと、麻也子のハイヒールのかかとが折れて、男にヨロッ。かつて、昼メロなどを「よろめきドラマ」なんて呼んでたけど、マジでヨロッとする不倫演出。そのまんますぎるから。
さらに、出会ったばかりの相馬に、名前を呼びすてにされて、キュンッとする麻也子。昨年末「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマから、「ムズキュン」というフレーズが飛びだしたが(この「ムズキュン」って口にするたびに、こっ恥ずかしくてムズムズするのはともかく)、こっちは「不倫は恥だが役に立つ」とばかりに、ムラムラしっぱなしのムラキュンだ。
いちご狩りに行けば、やっぱりよろけて男に抱きとめられ、ムラムラ。畑で大根引っこ抜いて、丸かじりからのキスでムラムラ。ホテルのレストランでは、いきなり「部屋とってあるんだ」とルームキー出されてムラムラ。
唯一ムラムラに水を差すのが、元夫・稲垣の泣き芸(号泣議員・野々村レベル)という。不倫がテーマなのに、なぜか見ている人すべてが半笑いになってしまうおめでたい展開。もう毎年お正月にスペシャルやったらいいよ。おせちもいいけど、不倫もね!
※週刊朝日 2017年1月27日号