――それ以来、映画での共演の回数も増えていった。やがて夫から、夜ごとの電話アタックがスタート。
妻:私は神戸の実家暮らしで、父はとても厳格でした。夜な夜な電話が来るから、「誰からだ!」って。答えるよりしょうがないから、「扇雀さんです」って言うと、「あいつはだめだ、どれだけ女がいると思ってるんだ!」って(笑)。
夫:それでも、時間をみつけてはデートしたな。私が自分からデートに誘ったのは、この人が初めてだったんですよ。
妻:結婚の話も、私たちの間では早くから出てたんです。でも、彼から条件がある、って言われて。
夫:結婚したら、仕事は辞めてくれ、と。
妻:こっちはやっと、俳優になれたばっかりですよ。冗談じゃないわ。
夫:どうしようかって、ずるずるとつきあってるうちに……。
妻:私が妊娠したんです。悩みましたね。
夫:お世話になっていた作家の川口松太郎先生に相談しに行ったね。
妻:子供を産んで、シングルマザーになって俳優を続けようと思ったんですよ。
夫:でも、川口先生が「子供にとって父親がどんなに大切なものか、わかるか?」とおっしゃって。
妻:両方の親は私が説得するから、任せておきなさい、って言ってくださった。
夫:結婚式なんかしなくていい。その代わり、その金で二人で世界一周してきなさい。きっとそれが二人の今後に役に立つから、とも。
妻:そしたら今度は、中村の家が結婚式は絶対にやりなさい!と。「歌舞伎役者が結婚のお披露目をしないなんて、あり得ない」
夫:そしたらまた川口先生が「まかせとけ!」(笑)。
妻:帝国ホテルで立派なお式を挙げていただきました。
※「扇千景『3時のあなた』での出馬表明がまさかの… 出馬秘話を明かす」へつづく
※週刊朝日 2017年1月6-13日号