黒木華(くろき・はる)/1990年生まれ。大阪府出身。大学在学中に野田秀樹の演劇ワークショップに参加、2010年NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」で女優デビュー。14年「小さいおうち」でベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞(撮影/写真部・馬場岳人)
黒木華(くろき・はる)/1990年生まれ。大阪府出身。大学在学中に野田秀樹の演劇ワークショップに参加、2010年NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」で女優デビュー。14年「小さいおうち」でベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞(撮影/写真部・馬場岳人)
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 黒木華が江戸川乱歩の「人間椅子」を読んだのは、中学生のときだ。なんて妖しくて色っぽい話なんだろう。それまでも様々な本を図書館で借りていたけれど、“色っぽい”という感想を持ったのは、それが初めてだった。

「小さい頃から、本は好きでした。本を読んでいると、心は時代や国境を超えられる。意外な展開があれば想像力が鍛えられるし、読後にもたらされたものが、感じたことのないモヤモヤだったりすると、それが何なのか思考する。私は、世の中のわからないこと全部に答えを出す必要はないと思っていて、昔から、解明することよりも、想像したり思考したりすることのほうが好きなんです」

 そんな彼女が、江戸川乱歩の小説を題材にした舞台に挑戦する。「お勢登場」は、劇作家であり演出家の倉持裕さんが、江戸川乱歩の作品群の中から8本の短編小説を選び、一本の演劇作品として再構成したものだ。黒木さん演じる主人公の“お勢”については、倉持さんが彼女をイメージして“当て書き”したという。

「人を殺めてしまう、いわゆる“悪女”なんですが、無邪気さも健気さも邪悪さも含めて、すべてが色っぽさに繋がっていくような、とても不思議な役です。お勢が人を殺める瞬間、たぶん、観てくださる人は、“なぜ?”ってその動機を探りたくなると思うんです。でも私は、お勢にそれをさせてしまったのは、退屈からくる衝動なのかもしれない、なんて思ったりもします。いろんなことを想像させてくれると同時に、いろんなことを思考させてくれる台本です」

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