内閣府原子力委員会で委員長代理を務めた鈴木達治郎氏も、現状の核燃料サイクルは絵に描いた餅だと批判する。
「高速増殖炉ができないだけではなく、プルサーマルで燃やした燃料を加工する工場も計画もないためサイクルにならないのです。いまの状況で六ケ所を動かしたらプルトニウムがどんどん増えてしまう。それでも政府と電力会社は核燃料サイクルが必要だと言い続けているので、政治家もコロッと信じてしまう。ですが、核不拡散を主張するアメリカはこうしたいい加減な状況を放っておかない。新政権の誕生後、日米問題になる恐れもあります」
国民へのツケはそれだけではない。経産省は福島第一原発の賠償や廃炉費用など約8兆円を国民負担とする検討を始めた。4月の電力自由化で小売りに参入した新電力にも負担させる案が出ている。だがこれには与党内からも批判が多い。
「もともと原発は事故の社会的費用を入れてもコストが一番安いと言っていたではないか。東電は今上期2742億円の黒字を出している。利益は自分のものにしておいて、あとは国民負担などという話は筋が通らない」(自民党中堅議員)
前出の古賀氏は国民負担を課す前に、東電を破たん処理すべきだと述べる。
「破たん処理をすれば、株主資本と借金を棒引きにできるから、そのぶん国民負担も減る。しかし破たんさせてはいけないとなった瞬間に、すべてが電気料金への上乗せや税金負担になってしまいます。そもそも株主も銀行も責任を負わないのに税金を使い、利用者にも負担が来るなどどう考えてもおかしい。こうした与党の政策のおかしな点が報道されないのは、野党民進党の支持母体である連合傘下に電力総連がいて批判できないからなのです」
世論調査では事故リスクなどから反原発派は国民の過半数を超える。だが、粛々と再稼働と核燃料サイクルを続ける安倍政権。国民は我慢の限界に来ている。
※週刊朝日 2016年11月18日号