アストリッドは、高速増殖実証炉の「スーパーフェニックス計画」が失敗したフランスが新たに打ち出してきた高速実証炉計画。2030年代半ばの運転開始を目指し、日本政府も研究開発に参加することを14年に合意している。問題は巨額な開発費がかかることだ。原子力資料情報室の伴英幸共同代表が言う。

「アストリッドの開発費は5700億円と評価されているが、これで終わるとは思えません。日本はもんじゅと同じくらいの費用を要求されるかもしれない。そこで得られた成果が日本で生かせるか不明だし、仮にうまくいったとしても、原発よりもはるかに危険な高速炉を今後受け入れる自治体はおそらく国内にはないでしょう。つまり、計画に協力しても無駄遣い以外に何もないということです」

 古賀氏も「日本の原子力関連産業にお金が落ちるためにフランスに付き合っているだけ」と話す。

 核燃料サイクル自体、すでに破たんしている。

 原発で燃やした使用済み核燃料を再処理して抽出した日本のプルトニウム保有量は、核保有国を除いて最大の48トンにも上る。だが、本来の使い道の高速増殖炉ができないからたまる一方だ。プルトニウムを消費させるために考えついたプルサーマルにしても、稼働しているのは伊方原発の3号機だけ。日本のプルトニウムの3分の1を保有する東京電力は、福島第一原発3号機と柏崎刈羽原発の3号機がプルサーマルだが、稼働のメドさえ立っていない。

 行き場のない使用済み核燃料は国内に1万7千トンあり、六ケ所の再処理工場の貯蔵プールも設備が動かないのにすでに9割が埋まっている。そんな中で原発を動かせば、さらに使用済み核燃料はたまっていく。

 前出の河野議員は「破たんした核燃料サイクルは手じまいをしないといけない」とし、国が続けようとする理由をこう説明する。

「まず六ケ所の再処理工場の問題です。持ち込んだ使用済み核燃料を再処理しないとなると、青森県からは核のゴミだから持ち出せと言われる。だが、持ち出す場所がないからやめると言えないのです。もう一つは原発を動かすと20年には使用済み燃料プールがいっぱいになってしまう。そのために再処理を続ける。こんな本末転倒な話で明らかに不要なコストを国民に回しているのが現状です。政府は原発の問題点を国民にきちんと説明し、経産相は青森県に頭を下げ、最終処分地を探さないといけません」

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