住宅は資産のはずだが、将来のトラブルを回避したということだろうか。住宅情報誌の編集長などを務めた住宅コンサルタントの大久保恭子氏は言う。
「民法では等しく権利を分け合う規定で、誰かが得をすることはもめごとの解決にはなりません。最終的にはお金の問題なので、平等に権利を分け合うしか解決法はありません。そのためには親が元気なうちに家族会議を開いて、よく話し合っておいたほうがいい。その結果を申し送り事項として遺言書にしておけば円滑に運ぶはずです」
住宅政策を担当する国の窓口は、国土交通省住宅局だ。同局の担当者は、問題解決の処方箋として、(1)新たな住宅循環システムの構築(2)空き家を活用した地方移住、2地域居住の促進(3)介護、福祉、子育て支援施設への転換──などを例に挙げるが、実際に空き家問題に取り組むのは市区町村。国は「自治体の取り組みを後押ししたい」(担当者)と及び腰だ。
この問題で先駆的な取り組みで知られるのが東京都足立区。区内には古い木造住宅が多く、大地震などの防災が悩ましい。同区は空き家やごみ屋敷対策として、11年、13年に対策の条例を施行。勧告に従って解体工事をすると費用の9割、最大100万円を助成している。
富山県射水市は解体費用の半分、最大50万円まで助成、さらに解体後の新築工事に要する費用の半分、最大60万円まで補助金を出すという。先手を打たなければ、地域コミュニティーの崩壊につながりかねないとの危機感からだろう。
地方税である固定資産税は、相続税と違って物納という制度はない。家屋を所有する限り、なにがしかの税負担がかかってくる。空き家の売買、解体もおのずと限界がある。そうであるなら、家が朽ちてしまう前に、地域やNPO、あるいは子育て世代が、空き家を積極的に活用できる仕組みを整えるべきではないか。
※週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋