花森安治さん (c)朝日新聞社
花森安治さん (c)朝日新聞社
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 NHKの人気連続テレビ小説「とと姉ちゃん」は、「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子(しずこ)、花森安治(やすじ) をモチーフとしている。ドラマでは、常子が「女性のための雑誌を作る」と雑誌への思いを語っているが、そこには花森の反戦思想が描かれていないという。

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 天才編集者、そしてジャーナリストとして昭和という時代を疾走した花森安治は、どのような人だったのか。

「暮しの手帖」元編集部員の河津一哉さん(86)は、こう振り返る。

「60年安保闘争のころ編集部員が、『デモの特集をしよう』という提案をした。ところが花森さんは、『そんなものはマスターベーションにすぎない!』と言い切るんです。『そういうことは、NHKや朝日や「世界」に任せておけばいい。僕らは便所の隅っこにあるゴミをどうするのかということをやるんだ』と」

 花森は「庶民」という言葉をよく使った。抽象的な概念を使って、理論を語るのではない。戦後の混乱で衣食住がままならないなか、庶民の日々の暮らしを少しでも良いものにするヒントを与えることが、雑誌の目的だった。

 それを物語るエピソードがある。創刊前に鎭子から「雑誌を作りたい」と相談を受けた花森が、鎭子に語った言葉だ。

〈国は軍国主義一色になり、誰もかれもが、なだれをうって戦争に突っ込んでいったのは、ひとりひとりが、自分の暮らしを大切にしなかったからだと思う。もしみんなに、あったかい家庭があったのなら、戦争にならなかったと思う〉(『「暮しの手帖」とわたし』大橋鎭子著)

 このエピソードは、ドラマの第15週でもモチーフにして取り上げられた。ただ、花森と鎭子のやり取りには、もう一つの重要な言葉があった。

〈君がどんな本を作りたいか、まだ、ぼくは知らないが、ひとつ約束してほしいことがある。それは、もう二度とこんな恐ろしい戦争をしないような世の中にしていくためのものを作りたいということだ。戦争は恐ろしい。なんでもない人たちを巻き込んで、末は死までに追い込んでしまう。戦争に反対しなくてはいけない。君はそのことがわかるか〉(前掲書)

 こう問われた鎭子は「わかります」と答えた。

『花森安治の青春』の著書がある馬場マコト氏は、こう話す。

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