記者発表会の唐沢寿明と高畑充希 (c)朝日新聞社
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 週間平均視聴率が毎週20%を超え、トップを独走するNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」は、まもなく大団円を迎える。ドラマは「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子(しずこ)、花森安治(やすじ)をモチーフとしているが、「事実とあまりに違う」と関係者から“異議”を唱える声が噴出している。

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小榑:「とと姉ちゃん」を見ていると、「暮しの手帖」の実際と異なるところが多々あります。NHKの担当者からは、「これは事実ではなく、フィクションですから」ということを何回も言われましたが、当時を知っているわれわれからすると、納得がいかないところがありました。例えば、唐沢寿明さんが演じる花山伊佐次は、「暮しの手帖」編集長の花森安治がモデルになっています。ドラマの中では、花山さんは原稿を書くだけの人のように描かれていますが、実際の花森さんは記事の企画や取材、内容の全てのページの絵、写真、レイアウトなど雑誌一冊を隅から隅まで作っていました。高畑充希(みつき)さんが演じる小橋常子は、「暮しの手帖」創刊メンバーの一人、大橋鎭子さんがモデルです。ドラマでは常子が商品テストをやろうと提案したり、編集長と対等に接する人物として描かれていますが、実際には、花森さんの指示のもと、走り回っていた編集部員の一人でした。

――NHKのドラマ作りに異議を唱えたのは、小榑(こぐれ)雅章さん(78)だ。1960年から「暮しの手帖」編集部に所属し、名編集長の花森から18年にわたり薫陶を受けてきた愛弟子の一人だ。

「暮しの手帖」は48年に創刊され、戦後にいち早くファッションなどを紹介。電化製品の性能などを独自に検証する「商品テスト」が論議を呼び、その実証のため公開テストを行い、話題をさらった。最盛期は100万部近い発行部数を誇った。

小榑:そこは主人公がとと姉ちゃんの常子だから、フィクションだからとNHKに言われましたが、商品テストをやった雑誌は「暮しの手帖」しかない。ドラマに登場する商品テストでは、欠点を明らかにしたり、「これは駄目です」と言ったりすると、アカバネ電器が悪役として嫌がらせをして、最後には勧善懲悪的な結果になるのですが、あれもまったくのフィクションです。企業の方々はもっとビジネスライクに来て、文句などは言わずに話し合いをしていましたよ。

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