「シン・ゴジラ」が大ヒット上映中だ。3.・11後初の国産ゴジラで、震災や原発事故の記憶と現実とも重なる。主人公は逃げ惑う住民ではなく、徹底的に「日本国」。さまざまな切り口で考えさせられる、国民、政治家必見の映画だ。
政界随一の安全保障問題の論客として知られる石破茂・元防衛相が、「シン・ゴジラ」の劇中で日本政府が自衛隊の防衛出動を決断したことに異を唱えた。
「何故ゴジラの襲来に対して自衛隊に防衛出動が下令されるのか、どうにも理解が出来ませんでした」
石破氏が自身のブログにそうつづり、話題になっている。石破氏が見た「シン・ゴジラ」とは。
石破:いままでのゴジラ映画を何作か見ていますが、私の見た作品ではゴジラは人間の味方で、地球を攻めてくる怪獣と戦ってくれていました。愛すべき存在で、どこかかわいいところがあった。1950年代にくり返された水爆実験をモチーフとした初期のゴジラ以後は、凶悪凶暴な生物として描かれたことはあまり多くないという印象があります。
巨人やヤンキースで活躍した元プロ野球選手の松井秀喜さんが“ゴジラ”の愛称で呼ばれたのも、ホームランを量産するバッターとして強い面だけではなく、彼の温かい人柄にも重ね合わされていたはずです。
ところが、今回の映画では、最初に上陸するシーンからゴジラの目は不気味な動きをしていたし、どんどん凶暴化して、体内の「生体原子炉」から放射性物質も放出した。今までの私が持っていたゴジラのイメージとはずいぶん違うなあと驚きました。
東日本大震災や原発事故を想起させるような設定には、日本の安全保障政策や原発政策に対するメッセージも含んでいるのかもしれない。われわれは無謬(びゅう)ではありませんので、それを受け止める責任があるでしょうね。
――自衛隊が防衛出動したことに疑問を呈した理由を、石破氏はブログにこうつづる。
「ゴジラが圧倒的な破壊力を有していても、あくまで天変地異的な現象」であり、「国または国に準ずる組織による我が国に対する急迫不正の武力攻撃」ではないと指摘。そのうえで「害獣駆除として災害派遣で対処するのが法的には妥当なはず」との見解だ。