「条件のいい」男性の後添いに収まり、がっぽり財産をいただく──。映画「後妻業の女」で、そんな悪女をチャーミングに演じた大竹しのぶさんと、悪女と結託する結婚相談所所長役の豊川悦司さん。撮影のこと、お互いのこと、騙す女と騙される男の心理まで、縦横に語り合った。
* * *
豊川(以下、豊):自分が子どものころ、大阪にこういう感じの中年のオッサンがいたな、というイメージがありました。舞台は平成なんだけど、昭和のにおいがする、脂ぎった肉感的な中年の男というイメージで演じていました。
大竹(以下、大):柏木が持ってた、あのちっちゃいバッグ……。
豊:クラッチバッグね。
大:すごく似合ってた。持ち方もいやらしくて(笑)。
豊:靴もバッグとコンビなんですよ。
大:思い出しただけで今も笑える。豊川さんは背が高いから、あのちっちゃなバッグが微妙な大きさなのよね(笑)。
豊 あのバッグは小道具さんと話をしながら「こういう感じだよね」と決まったんです。鞄を持たない案もあったんだけど、柏木はやっぱり持ってたほうがいいでしょ、と。ドラえもんのポケットではないけど、そこに何でも入ってるみたいなイメージでした。大竹さんは小夜子を演じるにあたって監督に何て言われたんですか。
大:「チャーミングでいてほしい」って。
豊:納得ですね。男たちが騙されてしまうのは、小夜子という女性がとてもチャーミングだから。マストの条件だと思います。あとはタイミングだったり、騙される側の背景だったり。タイミング合わせみたいなことがあるんでしょうけど……。
大:そこを柏木は指導してたんだもんね。
豊:結婚相談所所長の柏木は、つまり「お見合いばあさん」みたいな仕事じゃないですか。男ならだれでもいいわけじゃない。小夜子に惚れちゃうだろうな、という男を選んでいたんだと思うんですよ。
大:小夜子はチャーミングさを意識する一方、「男からお金を奪う」という目的があったので、全身全霊で愛しているふりをしました。「いやぁ~ん、もう好き~」みたいな(笑)。