昨年夏、那須御用邸での静養に向かう両陛下 (c)朝日新聞社
昨年夏、那須御用邸での静養に向かう両陛下 (c)朝日新聞社
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 天皇陛下のお気持ち表明を受けて、緊急対談が実現した。政権中枢で皇室典範の改正論議にかかわった園部逸夫氏と、皇室取材を長年続ける岩井克己氏。二人が天皇陛下のメッセージから現代に即した天皇のあるべき姿を語る。

岩井:高齢化社会のなかで、ご高齢の課題が出てきた。陛下の場合、象徴天皇のありようを模索しつつ、ご自分がずっと積み上げてきたものが崩れるのは耐えられない。そうしたお気持ちがにじんでいます。

園部:そうですね。同時に、天皇は、憲法や典範によって全てを左右される存在ではない。人間としてのお気持ちを発露する機会も与えられるべきです。

岩井:私はずっと、「平成流」の天皇陛下を見てきました。日本国憲法第4条は天皇は「国事に関する行為のみを行ひ」と定めています。しかし、それ以外の公務を増やし、きめ細かく向き合い、離島まで行かれる。それは何だろうと、疑問に思っていましたが、陛下が「遠隔の地や島々への旅も、象徴的行為として、大切なものと感じて来ました」とおっしゃったのを聞いて、腑に落ちました。象徴として務めを果たし、国の安寧と国民の幸せを祈るには、国民の置かれた境遇について、じかに知り、思いに寄り添うことが大切だというくだりが印象的でした。

園部:その作業を繰り返さないといけない。仕事は増えていくが、何より体が受け付けないと。私も87歳になるけども、80を過ぎたら、昔は隠居です。家を継ぐ皇太子さまもいます。2度も手術して大変だったとおっしゃっているのに、表向きの仕事もこなしている。

岩井:戦前の天皇観を大事にする人の中には、天皇は仕事をするから天皇なのではない。何もされなくても、天皇なんだと。仕事ができなくなり、摂政や国事行為の臨時代行を置く形となっても、ずっと天皇として長生きしていただきたいという意見も出ています。

園部:よくわかります。しかし、思うように行動できなくとも、天皇の地位にあるだけでいいということは、今日の常識として考えづらい。人は摂政や国事行為を代行する方ではなく、天皇を見ますからね。飾りか神仏のように存在するだけでいい、と唱え続けると、人間天皇についての認識を誤るのではないかと危惧します。

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