7月26日未明に起きた、相模原・障害者施設19人殺害事件。凶行に及んだ植松聖(さとし)容疑者の言動から、精神疾患の疑いが出てきている。
これにより、国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部部長の松本俊彦氏は、精神障害者への偏見を危惧する。
精神障害者が暴力行動に出る確率は、健常者よりむしろ少ないといわれています。多くの人は暴力とは無縁で、家に引きこもりがちになります。まれなだけに、精神障害者の暴力行動を科学的、統計学的に予測することはきわめて難しいのです。
措置入院の際に妄想性障害などと診断されていますが、現時点の情報では、医療が有効な病態なのか、そもそも医療の対象とすべき病態なのか判断できません。もしかすると加害者は、危険な思い込みを持っていて、大麻などの薬物によって一時的に気分が高揚し、犯行におよんだ可能性はあります。ただ、大麻の影響だけでは到底説明がつきません。
難しいのはその「危険な思い込み」です。例えばヒトラーの優生思想を例にとっても、それが思想なのか妄想なのかの区別は難しい。妄想ならば医療の対象ですが、思想ならば医療の対象とはなりません。