少し前、オーディオマニアの間で論争が勃発した。ある輸入高級オーディオメーカーの、何十万もするCDプレーヤーの中を開けてみたら、中身のメカが国産の数万円CDプレーヤーとまったく同じものだったという事件だ。
数万円のプレーヤーと同じものを、高級感ある筐体に入れただけで価格が十倍以上に跳ね上がるとは、これはボッタクリではないのか、というのである。
さあ、この話を、皆さんはどう思われるだろう?
たしかに、中身がオリジナル設計でない流用パーツであるなら、メーカーもそう欲張らずに、もう少し安く販売してもよかったかもしれない。ただ、中身のメカが同じだからって、同じ音がしないのがオーディオなのである。
筐体の形状はもちろん、パーツの取り付け位置、はんだ付け、アースの取り方、電源コードのチョイス、ねじの締め具合にいたるまで、一流と呼ばれるオーディオメーカーは、独自のノウハウを持っている。それらを駆使して組み立て、そのメーカーの狙いどおりの音質にチューニングして出荷される。果たして素人にそれができだろうか?ただ組み立てるくらいならできたとしても、音質を自由自在にコントロールするなんて不可能だろう。
音楽に精通したエンジニアがそれをやってのける。だからオーディオ製品は高いのだ。
オーディオ機器は、よくテレビやプロジェクターなどの映像機器と同じように扱われるが、それは根本的に発想が違っている。例を挙げよう。
繋げば音が良くなるというオーディオ用の高価な別売り電源ケーブルや高級電源タップ、これらを使ってテレビやプロジェクターの電源を供給したなら、果たして画質が鮮やかになったり、美しくなったりするかという問題だ。
「もう全然ちがう!」と、いう人もマニアのなかにはいる。せっかく高い電源コードを買ったんだから、電気がスムーズに流れて画質もよくなったと思いたいのだろうが、しかし、わたしはそうは思わない。
オーディオ製品は機械であると捉えている人、そしてそのメカニカルな性能がアップしさえすれば、音質も自動的によくなると考えてる人にありがちな間違いだ。
はっきり言っておこう。オーディオ製品は一見電化製品のようだが、じつは楽器の側面を兼ね備えている。よって、音質をよくするためには、機械の性能アップよりも、調律、すなわちドレミファソラシドのチューニングが合ってることこそが重要なのだ。
オーディオアクセサリーで画質がよくならない理由は、画質とドレミファはまったく関係がないからなのだ。
では、オーディオ機器のチューニングを合わせるとはどういうことか。たとえばアンプの筐体の形や容積はそのままギター等のボディにあてはまる。ケースにどんな孔が開いているかも重要だし、基盤を端から何センチの位置に取り付けるかも、弦楽器の“ブリッジ”と同じことで、もちろん音に影響するだろう。
また、余計な鳴きを発生する部品に対しては、鳴き止めを施す必要がある。そうやってプロのエンジニアによってヒヤリングを繰り返して作られた機器は、ただ同じ部品を使って組み立てたものと比べると、ちゃーんと音質の差となって現われてくるのだ。
【収録曲一覧】
1. Without a Song
2. Where Are You?
3. John S.
4. Bridge
5. God Bless the Child
6. You Do Something to Me