若い世代はまず、出産がひとつの節目だ。それまで何の問題もなかったカップルも、出産を機に夫が本性を現して危機に直面する。

 第1子を授かった夫婦の約6割が、「生まれて初めて抱いた赤ちゃんがわが子」という時代。職場に妊婦も少なく、男性も女性も妊娠の実態に触れる機会がないまま、子どもを迎えてしまうことが多い。

「それでも女性は妊娠・出産を通じて親としての自覚が芽生えやすいのですが、男性は実感が薄いままわが子が生まれて、うろたえるばかりになることがある。妻の身体的・精神的負担も理解できない。これが妻の夫に対する不満の始まりです」(小林さん)

 激動の子育て期が終わっても、妻の鬱屈はたまる。

 50~60代では夫の退職が夫婦関係の次なる大きな危機だ。仕事人間で家事や育児に協力してこなかった夫は、リタイア後も家事全般、妻へ頼りきりになりがちだ。にもかかわらず、“収入源”としての魅力はもはやない。夫は、ますます疎ましい存在になっていく。

 小林さんの著書では、夫の定年退職後持ち家を売り払い、住み替えだと言って夫を賃貸マンションに置き去りにして、家を売ったお金を持って逃げた妻、本気で「死ね!」と思ったときには夫の歯ブラシでこっそりトイレ掃除をして留飲を下げている妻など、“コップの縁”に向かって、夫への憎悪の水位を一滴ずつ上げていく妻たちの姿がつまびらかにされている。

 憎しみをたぎらせ、殺意にまで昇華させたとしても、多くの妻は夫に体力で負ける。“毒殺”は古くから「弱者が強者を殺す」代表的手口だ。法医学者の上野正彦さんは最近の傾向として、

「死ぬまでに時間のかからない方法にシフトしている」

 と話す。被害者がもがき苦しめば、それだけ毒殺の証拠が残りやすくなるため、青酸カリなど即効性の高い薬物が使われることが多いという。それも最近はカプセルが“人気”らしい。

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