若くして頂点に立った佐藤名人は、ファンの間で「貴族」の愛称で知られる。趣味はクラシック音楽の鑑賞。一人で暮らす都内の自宅ではネットのクラシック配信サイトで曲を流す。コンサートにも足を運ぶ。
ファッションへのこだわりぶりも有名だ。対局のときは、テーラーで仕立てたスーツで臨む。今回の名人戦でも、グラデーションのかかったパープルの和服が話題になった。
ベルギーのブランド「アン・ドゥムルメステール」がお気に入り。「西洋の中世や近世の文化が好き。その優雅さが服に採り入れられている点が気に入っている」と語る。
そのブランドの服を何着持っているんですか?
「はっきりわからないんですよ」との返事だったが、翌日電話が入った。
「服だけで100着以上ありました。アクセサリーなどを入れると、150点ぐらいあると思います」
公式戦の前日にもかかわらず、丁重に数えてくれた。新名人は強くて「貴族」なだけでなく、人一倍誠実な若者なのだ。
※週刊朝日 2016年6月17日号