ブルー・モンク/リチャード・デイヴィス
ブルー・モンク/リチャード・デイヴィス
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 新年早々、当店で「JJ工房」を開催した。「JJ工房」とは、オーディオマニアたちが、機器やソフトを持ち寄って、音を出し、「ああでもない、こうでもない」とやるのが楽しいオーディオイベント。JimmyJazzでは、このような催しを「JJ工房」と称し、店内で年数回、不定期に行っている。

 今回のネタは「生録」。「JJ工房」の常連マニアお二人が、にわかジャズメンに変身。アルトとギターのデュオで「ブルー・モンク」を演奏してもらった。

 普段店内で流してるレコードの音と違って、プレゼンスある生音は、やはりいいものだ。それをその場でPCMレコーダーに録音し、即当店のスピーカーで再生して聞き比べてみよう、というのが本日のメインテーマ。

 さて、皆さんはこの結果を、どう予想なさるだろう。そりゃあもちろん、「日本一音の良い理容室」であるからして、生と錯覚するような音がスピーカーから飛び出した!…と、いうほど現実は甘くない。

 録音の際に、楽器からの直接音以外に、演奏している部屋(店)のアコースティックな響きも付加されるから、それを同じ場所で再生するとなると、「部屋の響き」の二乗で、響きのほうが勝ってしまい、ずいぶんモワモワした音になってしまうのだ。

「音像が遠いな。なんぼ最新のPCMレコーダーでも、内蔵マイクの性能ではこうなってしまうんや。録音はやっぱりマイクやで!」

 プレイバックの音を聴いて、マニアは口々に好きなことを評論する。演奏してくれた二人も(演奏の上手下手は置いといて)、やはりこの音には不満があるようだ。

 では、当店もヴァン・ゲルダー・スタジオのように、ノイマンとかテレフンケンとかのマイクロフォンを揃えたら、ちゃんとした音が録れるのだろうか?ある意味、イエス。ある意味で、ノーだ。

 じつを言うと、この音源収録中、わたしはデジタルカメラの動画撮影機能を使って、演奏の様子を撮影していた。ムービーカメラではないから、マイクだってデジカメ付属のそれこそ簡素なものである。これをパソコンに取り込んでプレイバックしてみると、あら不思議!PCMレコーダーで録音した音よりずっと良いではないか!?これは何事かと参加者一同騒然。

 デジカメで撮った動画の音声は、音の芯がしっかり出ていて、当の演奏者たちも、「こっちのほうが演奏の意図が伝わってくる」と合格サイン。

「マイクの位置が違うせいだ」「マイクの特性の違いだろう」「三脚を使わず、カメラを手に持って撮ったのが良かったのだ」「マスターがジャズの人だからだ」等、もっともらしいのから怪しいものまで、さまざまな意見が出たが、やはり音楽を扱うのに「性能」や「スペック」なんてものは、あまりアテにできないということだ。

「これは面白い結果が出たので、YouTubeにアップして、全世界の人に聴いてもらおう!」と提案すると、演奏者二人が猛反対。「たのむからそれだけはやめてくれ」と、足にすがりつくように仰るので、残念ながら非公開。かわりにベテランのリチャード・デイヴィスとジュニア・マンスの心温まるデュオで「ブルー・モンク」をお楽しみください。

【収録曲一覧】
1. ブルー・モンク
2. サマータイム
3. シングル・ペタル・オブ・ア・ローズ
4. ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラブ
5. ブルー・ボッサ
6. ディア・オールド・ストックホルム
7. オン・ザ・トレイル
8. イン・ア・センチメンタル・ムード