「ご家族はみんな元気でしたか」「大変だったでしょう」

 皇后さまも、次々に声をかけてゆく。

「怖かったでしょう」「暑いから、しっかり水分をとってくださいね」

 4、5分ほども続いただろうか。声かけを終えた両陛下が庁舎に入る瞬間、自然と拍手がわきおこった。

 続いて、すぐ近くにある南阿蘇中学校の体育館を訪れた。212人が避難する建物内は、生活スペースごとに青色のシートが敷かれただけで、隣との仕切りはない。両陛下はスリッパを履かず、二手に分かれると一人ひとりに歩み寄った。

 天皇陛下は硬い床に両ひざをつくようにして、じっくりと時間をかけて話をしているようだった。皇后さまはできるだけたくさんの人と触れ合おうと、体育館内をせわしなく回った。被災者を見つけるとしゃがみ込み、また立ち上がって次の被災者まで小走りで近づく。その繰り返し。

 ご負担がないわけがない。帰りの本空港では、少し足を引きずるような場面もあった。

 3千人余りが避難生活を送る益城町に自衛隊ヘリで向かう際も、両陛下らしい姿勢があった。西原村や益城町、そして当初の計画より西に移動して熊本市東部を視察した。できる限り多くの被災地を目にしたいという両陛下の意向を受けたものだった。そして、幾つもの場所で、両陛下は黙祷を捧げた。

週刊朝日  2016年6月3日号より抜粋

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