
あの「土曜日のマイルス」が究極のヴァージョンで帰ってきた!
Saturn (Hannibal)
ご同輩!あの『マイルス・アット・フィルモア』の完全版がソー・ホワットから出たときはうれしかったですねー。ブートを聴いてきて、あれほど飛びあがって喜んだことって、そうはありません。水曜マイルスに金曜マイルスに土曜マイルスと、それはもうク~ッたまらんの300連発でした。
それだけに木曜マイルスが未発、さらに土曜マイルスのみサウンド・バランスに問題があり、贅沢にも「どうにかならんものか」と思っていた人も多いことでしょう。そこで究極のシリーズで定評のあるハンニバルさんがついにやってくれました、土曜マイルスの最上級ヴァージョンによる究極の復刻。これで奥座敷に鎮座していたチック・コリアとキース・ジャレットが常識的な位置にお出ましになり、ああ、これぞ聴きたかった浴びたかったフィルモアのマイルス土曜ワイド劇場ってか。
そうそう、忘れないうちに書いておきますが、このハンニバル盤もこれまで同様、プレスCDとDVDの抱き合わせ2枚組で、映像のほうは同年8月18日、マサチューセッツ州タングルウッドにおける伝説のライヴ。サックスだけスティーヴ・グロスマンからゲイリー・バーツに代わっている。こちらもプロ・ショットかつデジタル・リマスター・ヴァージョンというから期待大(まだ観てないんです)。
さて前述したバランスの問題。よくぞここまでヴァージョンアップできたものと感心するが、アイアート・モレイラの細かいパーカッションが鮮明に聴こえるのは従来どおり。そしてこの土曜マイルスの魅力は、やはりそのアイアートとマイルスの手に汗握るインタープレイにあると思う。たとえば《イッツ・アバウト・ザット・タイム》の4分10秒以降の、それはもうすばらしいトランペットとかけ声によるインタープレイ8は大阪か。アイアートがマイルスに向かってなにやら叫ぶ。マイルス、それに煽られてさらに燃える。通常の音源ではなかなか把握しがたいアイアートもちゃんと仕事をしていたことを実証する貴重な記録でもある。これを差し出せば人事課も黙ってハンコを押すしかないだろう。
以下、総括。これまでのソー・ホワット盤は、主にマイルスとアイアートの闘いを聴くために機能した。マニア御用達盤ともいえる。ところがこのハンニバル盤は一般ファン用に生まれ変わった。したがって全国全世界のマイルス者とジャズ・ファンに「聴け!」と強く叫びたい。これ以上の音楽、あんまりないと思いますよ。
【収録曲一覧】
1 Directions
2 The Mask
3 It's About That Time
4 I Fall In Love Too Easily
5 Sanctuary
6 Bitches Brew
7 Willie Nelson-The Theme
(1 cd+1 dvd)
Miles Davis (tp) Steve Grossman (ss, ts) Chick Corea (elp, per) Keith Jarrett (org, fl) Dave Holland (b, elb) Jack De Johnette (ds) Airto Moreira (per)
1970/6/20 (NY) and 8/18 (Tanglewood)