「人の三井」に、「組織の三菱」。グループの従業員は「結束が固い」と語り継がれてきた三菱自動車が、軽自動車の燃費の不正問題によって、日産の傘下に入った。
国内販売消滅の臆測も招いた今回の燃費不正。グループ企業からも、冷ややかな声が広がる。三菱車の海外展開を支えてきた三菱商事。ある社員は突き放す。
「また不正かよ、という感じ。三菱自の体質だと思います。足を引っ張りあい、上司ばかり見るヒラメ社員が多い。『親方日の丸』意識で、会社の外を見ずに、内しか見ていない。昨年度の決算で当社(商事)は赤字転落。三菱自の救済に動けば、株主代表訴訟にすらなりかねません」
商事は、三菱重工、三菱東京UFJ銀行とともに、三菱自を支えた「御三家」の一角。2000年と04年のリコール隠しで経営危機に陥った際は、御三家中心にグループで、計6千億円超の支援に踏み切った。
しかし、今や御三家の足元も火の車だ。
赤字の商事に加え、三菱重工は大型客船事業の特別損失などで純利益が前年比4割減。三菱東京UFJ銀行も、マイナス金利や最新の金融技術フィンテックへの対応など環境は厳しい。
同行の男性行員は「三菱グループうんぬんよりも、ユーザー目線でみてひどい話」と素っ気ない。三菱電機社員も「三菱車は世界中にスリーダイヤを宣伝してくれた。ただ、今回のように評判を落とされるのは、願い下げ」と迷惑顔だ。
危機管理コンサルタント会社リスク・ヘッジの田中辰巳氏は、三菱自に染みついたグループへの甘えの意識の問題点を指摘する。
「三菱グループの意識は『親方日の丸』と評されますが、三菱自動車はそれ以上に『親方日の丸の内』という甘えがあったのでしょう。何かあれば、丸の内の『家族』が助けてくれる。家族に面倒を見てもらえると思うから、ルールや規律を破ったりするのです」
こうした三菱自の姿は、小説にも描かれている。
00年代のリコール問題をモデルにしたとみられる『空飛ぶタイヤ』だ。