エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイヴ・スポット VOL.1
エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイヴ・スポット VOL.1
この記事の写真をすべて見る

 まさか、ジャズストリートの読者には居ないと思うけれど、「デジタル音源なら、どんな機械で聴こうと同じ音質だ」と、信じてる人がけっこう居るみたいである。当然のことながらそんなことはない。元のデータは同じでも、それがアナログ信号に変換され、アンプリファイヤーにより増幅され、音波となってリスナーの耳に届くまでに、さまざまなプロセスで音質は変化するものだ。

 そういえば昔、TDKのカセットテープのTVコマーシャルでマイルス・デイヴィスが、「左右の耳にコンピューターチップを埋め込むと、最高のブルースが演れる」みたいなことを空想していたが、現在、実際に左右の耳の穴のなかにiPodのイヤホンを突っ込んで音楽を聴いてると、なるほど最高のブルースとはこういうことかと、妙に納得したりする。

 わたしは頭部を左右から挟みこむタイプのヘッドホンが苦手で、最初の1分くらいはいいのだが、そのうち両耳が痛くなり、目の横の神経が突っ張って、とても音楽鑑賞などできたものじゃない。メガネやサングラスも同じように耳が痛くなるから、視力もあまりよくないのにずっとメガネはかけずにいる。

 だから、耳の中に入れるタイプのヘッドホンの登場には非常に助けられてる。だが、最初はiPodに偏見をもっていて、「そんなもんでジャズが聴けるか!」といっては粋がっていた。実際に音も悪かったのだ。

 それが、あるときから急にiPodの音質が格段に向上した。付属イヤホンがマイナーチェンジしたのである。それまでのイヤホンには、外部の音が聞こえるように、小さな孔が6つ開いていた。それが突然、なんと5つになったのである!!

 6つの孔が5つになったくらいで、それがどうしたのだと思うだろう。しかし、これは大事件なのである。

 アップルのやつら、さては気づきやがったな!?

 ジャズ・オーディオ・ファンのあいだで人気の音響メーカー、「アルテック」のスピーカーユニットにも5つ孔の開いたモデルがある。6つや4つでないところがミソ。孔が6つだと音が悪く、5つだと音が良いのである。もっと大雑把にいえば、偶数は音が悪く、奇数のほうが音が良い。同じ物がふたつあると共鳴を起し、音を滲ませてしまうからだ。

 ただの空気孔だと思えば6つでも4つでもかまわないのだが、それが楽器のように音質を左右する重要なファクターだということに、アップルの技術者は気づいたに違いない。

 それ以来、わたしはiPodのヘビーユーザーとなり、毎日欠かさず使っているのだが、酷使するせいか、件のイヤホンだけがすぐに壊れてしまう。ネットで純正イヤホンだけ売ってないものかと調べたら、あったあった、「iPod に同梱されている純正イヤホンです。バルク品につき、箱、保証書はありません」。

 すぐに注文、到着した袋を開けてみると…、見た目はそっくりだが微妙に感触が違う…。音を聴いて愕然。くそっ!ニセモノを掴まされた!!

 ニセモノでもなんでも、音さえ良ければ文句はないのだが、このニセモノイヤホン、ちゃんと5つ孔はついてるものの、どうも中と貫通していないようなのである!構造じたいは単純なものだから、孔が貫通したらけっこうイケるんじゃないか?いっぺん針で突いてやろうか?くそっ!くそっ!

【収録曲一覧】
1. ファイアー・ワルツ
2. ビー・ヴァンプ
3. ザ・プロフェット
4. ビー・ヴァンプ(別テイク:ボーナス・トラック)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼