安くなったガソリン価格 (c)朝日新聞社
安くなったガソリン価格 (c)朝日新聞社

 ガソリンが安い。電気やガスだって安くなる。ニッポンに恩恵をもたらす原油安。だが、日向があれば日陰もある。日々マネーや銃弾が飛び交い、一寸先は闇だ。

「ユカ(油価)ちゃん、今日も機嫌悪いよね」。最近の原油価格の下落ぶりには、大手商社の担当者もぼやきが止まらない。日によっては1バレル(約160リットル)当たり20ドル台。ピークだった2008年には同147ドル台に達したことを考えると、驚くほど安い。ガソリン店頭価格の比較サイトを見てみると、レギュラー1リットル当たり100円を切るスタンドも出ている。火力発電所の燃料として輸入する液化天然ガス(LNG)価格もこの油価に連動させる仕組みのため、自前で輸入、発電所を持つ電力・ガス大手各社は4月に一斉値下げする予定だ。

 第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは原油安効果について「相当なプラス。昨年から所得の海外流出を5兆円以上抑えられており、名目GDPは1%ぐらい押し上げ効果がある。消費税に例えるならば2%減税に相当します」。負担軽減になるのは間違いない。ただ、明るい話ばかりではない。ガソリンスタンドも揺れている。

 原油は製油所で精製され、ガソリンや灯油になるが、それを手がける石油元売り最大手JXホールディングスと東燃ゼネラル石油(業界3位)、出光興産(同2位)と昭和シェル石油(同5位)がそれぞれ統合や合併に乗り出す。再編の大きな歯車が動き始めたのだ。別の大手商社社員は言う。

「冬は灯油、夏はガソリンで食っている業界ですが、低燃費車人気や若者の車離れで、ガソリン需要は減り、減産しないとどうにもならない。製油所も減ってますが、それ以上に需要が落ちている。値下げで少ない需要を奪い合う過当競争になっており、ガソリンスタンドも元売り会社も利ざやを減らしています。電力は明るい競争ですが、需要が減っているこの業界は、明らかに暗い競争です」

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