
安倍政権によるNHK支配が強まっている。
「報道の現場にまで政府が直接関わってくることは従来まれでしたが、今では常態化しています」
元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大学教授は危機感をこう募らせる。
「解説委員が、無責任な評論家やコメンテーターのような発言をしている」
2月初めの自民党総務会で、一部の議員がNHK解説委員の個人名を挙げたうえで、こう指摘をしたのだ。
さらに、総務会ではNHKの2016年度予算案が2度にわたり突き返されるという異例の事態が発生。3度目の提出で承認され国会の審議へと進んだものの、与党の圧力が強まっていることを表す事件だった。
「政権寄りの報道をして与党にすり寄っているにもかかわらず、逆に揺さぶりをかけられている。非常に恥ずかしい体たらくです」(永田教授)
NHKは会長の権限が強い組織だ。籾井勝人会長は2年前の就任時に国際放送について「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」とするなど、政権寄りの発言を続けてきた。与党もその籾井会長の後ろ盾となってきた。
ところがその籾井会長は最近、自らの暴走で墓穴を掘っている。
本誌は昨年12月8日付の「平成28年度予算編成方針からの収支予算案の修正について」というNHKの内部資料を入手した。
「噂では聞いたことがあったが、これは幻の予算案です。このペーパーが表に出れば、籾井会長の進退にも影響しかねない」と、あるNHK幹部は驚いた表情で打ち明けた。