「生計が同じであれば、別居の老親や子どもにかかった医療費の領収書も合わせて控除を受けられます。扶養控除の対象でなくてもいいので、親の収入も関係ありません」

◇年金生活者の節税

 年金には「公的年金等控除」があり、収入が年金だけだと所得税を払っていない人も多い。天引きされている所得税の額は年末に送付される源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄で確認できるが、ここがゼロであれば申告しても還付を受ける余地はないことになる。

 ところが、前出の天野税理士は、年金生活者であっても、劇的な節税効果を得ることは可能だと話す。

「年金生活者は自分の税をゼロにしようとするより、子どもの扶養に入ることで子ども側の税金を大きく減らせることがあります」

 収入が年金だけという人で、65歳未満は年金額が108万円以下、65歳以上は158万円以下なら所得税法上の扶養に入ることができる。控除額は70歳未満なら38万円、70歳以上なら「老人扶養親族」の扱いとなるため、同居で58万円、別居でも48万円もの控除を受けられるのだ。これは専業主婦などが対象になる配偶者控除の38万円を大きく上回る。

「生活費を渡しているなどの実態があれば、同居する70歳以上の両親を共に扶養に入れるとそれだけで116万円もの控除を受けられる可能性もあります」(天野税理士)

 116万円の控除を受けられれば、最終的な税率が10%の人の場合、11.6万円もの所得税を減らせる余地があることになる。

「一定の障害が認められれば控除額はさらに増えます。負担している親の医療費や社会保険料を控除対象に加えられれば、一般的な収入の会社員でも所得税がゼロになる可能性も」(同)

週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋