音楽プロデューサーの水谷公生さん(右)と作家の小川糸さん夫妻(撮影/写真部・大嶋千尋)
音楽プロデューサーの水谷公生さん(右)と作家の小川糸さん夫妻(撮影/写真部・大嶋千尋)
この記事の写真をすべて見る

『食堂かたつむり』のヒットで知られる妻・小川糸さんは、大学生のときに数々のアーティストの作曲・編曲を多く担当する音楽プロデューサーの夫・水谷公生さんと出会った。当時、妻21歳。夫はバツイチの47歳。周囲に「犯罪だ!」と言われたこともあったという。

*  *  *

夫:僕はラッキーな人間で、スタジオミュージシャンとして最初に参加したシングルが100万枚売れたりして、一時期ものすごくちやほやされたんです。それにずっと音楽業界にいて、恥ずかしながら50歳近くになっても自分がどういう人間かよくわかっていなかった。でも彼女は最初から僕よりしっかりしていて、平気で僕に「それは常識と違うんじゃないの?」とか言うんです。彼女に言われても頭に来ないんですよ。

妻:意外かもしれませんが、彼、お金も全然持ってなかったんですよ。

夫:離婚で全財産を奥さんに渡しちゃったので。

妻:学生の私がお金を貸していたくらいですから。歯の治療代とか。

夫:そうでした(笑)。

妻:彼は常に好奇心が旺盛で勉強熱心。キャリアは長くても、いつまでも音楽が好きでたまらない子どものようなところがある。自分が40年後に同じような気持ちで仕事に向き合えるかなと考えると、やっぱりすごく尊敬できるんです。

夫:でも結婚のきっかけは流れだよね。

次のページ