パソコンやデジタルカメラといった機器やインターネット利用の拡大で、機器の中やネット上に、遺族が知らない遺品が残されるケースが増えてきた。デジタル遺品だ。放っておくと詐欺に悪用されたり多額の請求が来たりすることも。終活の一環としてデジタル遺品も見直す必要がありそうだ。
「夫のパソコン、どうしたらいいんでしょうか」
愛知県在住の鈴木清治さん(64)は5年ほど前、同じマンションに住む女性からこんな相談を受けた。夫(当時59歳)はがんで急逝。その遺品整理の中で困ったのがパソコンだった。
「パソコンやインターネットに詳しかった人なので、さまざまなデータや個人情報が保存されているのでは、と。奥さんは『捨てる訳にも下取りに出す訳にもいかない』と途方に暮れていました」(鈴木さん)
結局、ハードディスクを取り外してから処分した。鈴木さんは「自分にもしものことがあったら同じように家族が困るに違いない」と、パソコン内のデータ整理に着手したという。
亡くなった人が使っていたパソコンやスマートフォン、デジタルカメラなどの機器そのものや、そこに残されたデータは「デジタル遺品」と呼ばれる。データは幅が広く、デジカメの中の写真からメールをやり取りしていた人の個人情報、SNSなどのアカウントなども含まれる(表参照)。総務省の調査によると、2014年のインターネット利用状況は全体で80%を超え、60代では75%超、70代でも半数超と、高齢者の利用も年々拡大している。「デジタル遺品を放置すると、さまざまなトラブルが起きる可能性がある」と警鐘を鳴らすのは、情報セキュリティーの専門家で『「デジタル遺品」が危ない そのパソコン遺して逝けますか?』(ポプラ新書)の著者、萩原栄幸さんだ。