「50代でラブストーリーを演じる面白さを実感します」(※イメージ)
「50代でラブストーリーを演じる面白さを実感します」(※イメージ)
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「われわれはどこから来ないで どこへ 行かないのか」――。

“荒地派”の詩人として、戦後、詩作と新聞社の校閲の仕事を両立させ、退職後の80年代は精力的に作品を発表した男をモデルにしたねじめ正一さんの長編小説『荒地の恋』。そのドラマ化に当たり、主人公の詩人について勉強した豊川悦司さんは、冒頭に挙げた詩の一節が、とくに気に入ったのだという。

「このドラマの舞台になった70年代後半から80年代に50代だった人を演じるのは、僕にとっては一種の“時代劇”のような感覚ですね。戦前、戦中を生き抜いた世代のせいか、昔の日本人が持っている覚悟とか強さのようなものを、すごく感じます」

 豊川さんのデビュー作「君は僕をスキになる」でメガホンを取った渡邊孝好監督が、長い間温めていた企画で、シナリオができあがる前から、「映像化するなら、主人公は豊川くんに」と直接声をかけられていた。「53歳で親友である詩人の女房と恋に落ちてしまう男と、その男を取り巻く人々の群像劇ですが、僕はこういう恋愛ドラマが好きだし、今やる面白さってすごくあるんじゃないか、と思いますね。エンターテインメントの世界も、対象が高年齢化しているので、そのうち60代とか70代対象のラブストーリーがバンバン作られるようになってもおかしくない。僕はラッキーな時代に生まれたのかもしれないですね(笑)」

 新しい役の台本を手にして、「この役を終えたとき、俺は何を感じているのかな」と想像するときが、一番心躍る瞬間なのだとか。

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