「一国の大統領が被害に遭ったとなれば、市場には影響が出ていたでしょう。世界経済はテロ犯をスタジアムに入れなかった警備員に救われたのかもしれません」(市場関係者)
株式市場への影響もほぼなく一件落着か、といえばそうとも言えない。危機の火種がくすぶり続ける。
今後、ISへの不安心理が大きくなれば各国で株安が進むだろう。フランス政府は国民に外出を控えるように呼びかけているため、消費に影響が出るかもしれない。治安部隊など警備強化のために政府支出が膨らむ可能性もある。
フランスで極右政党・国民戦線の勢いが増していることも懸念材料だという。前出の中空氏は言う。
「EUでは財政赤字はGDP比3%以内にすることと決めていますが、フランスは達成できていない。極右政党が政権を取るとなれば、財政再建ができないままという可能性もある。フランス一国だけでなく、EUの信頼性を揺るがしかねません」
極右政党が政権を取れば反イスラム・反移民政策が強化され、国内外でさらなる対立を生む。ISとの戦いが長期化すれば、日本企業の経営姿勢も問われる。
「世界のなかで日本の経営者は『怖がり』な人が多いですね。ISとの戦いが長期化して経済への先行き不安が大きくなれば、設備投資を抑えたり、賃上げに消極的になったりする企業が出てくるでしょう」(国際エコノミストの今井澂氏)
出口の見えない国際政治に翻弄(ほんろう)される場面が続きそうだ。
※週刊朝日 2015年12月4日号