
「でも、最近は、知識がある人の話を聞いたほうがいいなって思うようになりました。喉が痛いときなんかも、ちゃんと喉のお医者さんに診てもらうようになった。ただ、整体の先生の話だけは、今でもまだ信じられないっていうところもあって、『阿部さんの筋肉って水分が少ないんですよ。だから痛めつけちゃダメです』とかなんとか言われるんですけど、向こうも商売だから、他の人にも同じようなこと言ってるかもしれないし。言われたこと全てを鵜呑みにしないようにしてます」
年齢を重ねて変化したことは、そうやって多少、専門家の意見に耳を傾けるようになったことだ。でも、昔より肉体の衰えを感じたり、疲れやすくなったりするといった自覚はない。
「舞台に出演すると、昔よりは疲れるようになりました。でも、若い頃全然疲れなかったのは、公演期間が短かったことが大きいんですよ。若いときって、そんなにお客さんが入ってないから、舞台をやってもせいぜい1週間ぐらい。年を取ってきてからのほうが公演期間は長くなってるんで、疲れるのは当たり前ですよね。前より動いてるんだから」
シンプルにポジティブ思考なのか、都合が悪いことには目を瞑っているだけなのか。そう簡単に本音が掴めない。
いずれにせよ、体力の衰えをそんなに感じなくて済んでいるのは、野球部での経験が貯金になっているのは間違いないらしい。
「当時は、いろんなことに我慢を強いられていたので、人より耐性がついているんだと思います。ただ、その耐性も、今は貯金を取り崩している状態。昔の貯金が底をつく前に、自分でケアをしようと思えるようになった。そう考えると、大人になったんだなぁ、という感慨はあります(笑)」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※記事前編>>「阿部サダヲ『倍返し』のセリフに困惑 主演映画『シャイロックの子供たち』」はコチラ
※週刊朝日 2023年2月24日号より抜粋