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 安保関連法案で揺れる節目の夏。先の大戦を知りえる「戦争本」を絵本作家のきむらゆういちさん(67)に教えてもらった。

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 絵本作家・あまんきみこの『ちいちゃんのかげおくり』は、戦火に巻き込まれた女の子「ちいちゃん」と家族の物語です。戦争の描き方には、いろいろありますが、子どもの視点から、美しい文章とイラストで物語が進んでいく。それだけに、なんともたまらない。

『けものたちは故郷をめざす』は、著者である安部公房自身の引き揚げの話を書いているのだろうか。少年が中国大陸から日本を目指し、苦労して苦労してついに日本行きの船に乗って日本の港に着くことができたのに、乗った船が密輸船だったために日本から入国を拒否されてしまう。

 そして、中沢啓治の『はだしのゲン』。戦争の悲惨さがドキュメンタリー風に、これほどわかりやすく描かれた漫画はありません。一言で言えば、「強烈なリアル」。最近、「図書館に置くな」「内容が残酷すぎる」なんて声が上がったようですが、意味がわからない。ちゃんと現実を知らなければならない。すべての人に読んでほしいです。

『私の八月十五日』は、ちばてつやさん、赤塚不二夫さんなど、漫画家や文筆家たちの8月15日の体験や思いをつづった画集です。

 中国・南京市の南京大虐殺記念館をはじめ、中国各地でこれまでに数回、展示会も開催されています。日本人がどのような体験をして何を思っていたか、中国で伝えたのです。社会的に意義のある取り組みです。

 戦争には、お互いの事情があります。ですので、お互いがお互いの事情を知ることが大事です。例えば、もっと中国の本も輸入して、日本が連戦連勝しているときに、中国では何が起き、人々が何を思っていたのか知っていたほうがいい。

 そういう点で、本や漫画などは主人公の気持ちがスッと入ってきます。お互いの気持ちを知り合えるのに最適なメディアなのです。

 お互いの事情を知らなければ、自分の言い分ばかりになって、平和な世の中なんて訪れない。政府もそんなところにお金を使ってもらいたいね。

(※上記の本の中には、単行本としては絶版になったものがあります)

週刊朝日 2015年8月7日号