撮影/写真映像部・高橋奈緒
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 2020年10月2日に配信を開始し、いまや18万人が愛聴する人気ポッドキャスト番組の「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」。幅広い年代をとりこにする番組の魅力をリスナーの声を通して探ってみた。

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「おはこんばんちはー!」。盛大な拍手に迎えられ、コラムニスト・作詞家・ラジオパーソナリティーのジェーン・スーさんのよく通る声が満席の会場に響いた。元TBS社員で現在はフリーアナウンサーの堀井美香さんは、やわらかな笑みを浮かべ、挨拶をしながら会釈している。

 1月26日の夜、東京・下北沢にある「本屋B&B」で「OVER THE SUN(以下、OTS)」公式本の出版記念イベントが開かれた。「OTS」はTBSラジオ制作のポッドキャスト番組。タイトルは「おばさん」をもじった。始まるきっかけは、TBSラジオの帯番組「ジェーン・スー 生活は踊る」で、スーさんの曜日パートナーの一人が堀井さんだったことから。2人の担当日が編成の都合で終了に。堀井さんと会話の相性のよさを感じていたスーさんがTBSラジオに相談し、新しい音声コンテンツが誕生した。

 公式本のインタビューで堀井さんは「スーちゃんと私は学生時代なら絶対に仲良くならなかったタイプ」と語っている。けれど一緒に仕事をするなかで目標に向かったときの踏ん張りやパワーのかけ方の「キモが一緒」と、自分と本質が似ていることに気づいた。一方、スーさんは堀井さんを「まじめ界のいちばんふざけた人」と評する。「社会規範の中でベストスコアを出す能力に優れている」とも。一見、水と油のようなアラフィフの2人が繰り広げる、開けっぴろげで縦横無尽なトークが番組の人気をうなぎ登りに押し上げた。

 番組から生まれた「OTS」用語もリスナーに愛されている。リスナーは「互助会員」、現状を変えるときは「沖に出る」と呼ぶ。

 毎週金曜日の午後5時に新作が配信されると、すぐにポッドキャストのランキング上位に。昨年10月の配信100回記念イベントでは、およそ800席のチケットが即日完売。今回、取材した公式本イベントも来場チケットは数分で完売した。リスナーから自然発生した非公式のLINEオープンチャットは参加数が3千人を超えている。Tシャツやタンブラーなどのオリジナルグッズ、菓子メーカーとのコラボ商品なども好調で、「OTS経済圏」という言葉まで生まれた。

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