「まだ因果関係は解明されていませんが、動脈がダメージを受けていれば静脈ももろくなっていると考えられ、それが弁の破壊につながる可能性は否定できません。当院では、静脈瘤の患者さんが来院された場合には動脈の異常の有無も確認し、他の病気の可能性を排除した上で下肢静脈瘤と診断します」(保坂医師)

 診察の結果、田崎さんの動脈の状態は良好で、持病もなかった。教師という立ち仕事で、足への負担を長年蓄積したことによる下肢静脈瘤と診断した。

 下肢静脈瘤の自覚症状は、血管が浮き出る、足がむくむ、重い、だるい、かゆい、ほてるなどで、進行すると湿疹や黒ずみ、潰瘍などの皮膚症状が起こる。治療法は、血管の内側を焼いて血管を閉じる「レーザー治療」と「高周波治療」、弁の壊れた血管を引き抜く「ストリッピング手術」、血管をしばる「高位結紮(けっさつ)術」、血管に硬化剤を注入して固める「硬化療法」などがある。

 以前は、ストリッピング手術が標準治療だったが、11年に980ナノメートルの波長のレーザーを使ったレーザー治療が、続いて14年に、より波長が長くなった1470ナノメートルのレーザー治療と高周波治療が保険適用になった。現在では、これらの血管内治療法が一般的になりつつある。

週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋