「『正社員は守られている』と言われていますが、大きな誤解です。会社は売り上げが悪ければ従業員をリストラする。好業績でも、従業員に還元しないどころかまだリストラをする。規制緩和されれば、私たち外資系企業で今、行われていることは、日本企業にも浸透していくでしょう」

 そうはいっても労働組合の組織率は17.5%。大半の労働者は未加入だ。個人が加入できる労働組合で、会社と闘う方法もある。

「最近は賃金カット、解雇だけでなく、職場のいじめやパワハラが増えています。労働組合がない会社がほとんどなので、ひとりで問題を抱えて精神状態を悪化させるケースが多い」

 こう語るのは、NPO法人労働相談センターの須田光照副理事長。

 同センターには昨年、8268件もの相談が寄せられた。相談者の64.2%は正社員だった。

 相談をした後、個人で加入できる労働組合に加入し、会社側との団体交渉を通して解決の道を探る。実際に、首都圏の卸売業の会社で、残業代の不払い分を支払わせたケースもある。

「ある男性からの相談に対しては、『労働組合を作ったらどうか』とアドバイスしました。実際に数人で労組を結成し、人数分の残業代700万円を支払ってもらい、社長のパワハラも謝罪させました。横の人とつながって交渉すれば、自分の手で“ブラック企業”を変えることもできるのです」(須田副理事長)

 残業代ゼロ法が施行されても、不当な扱いに対して闘うことはできる。そのためにも、日頃から勤務時間を記録するなど対策を立てることが大事という。追い込まれる前に、SOSを発信して孤立しないこと。万が一のために、電話相談先などを知っておきたい。

週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋

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