ニューポート・ジャズ・デイズ/マイルスVSキャノンボール
ニューポート・ジャズ・デイズ/マイルスVSキャノンボール
この記事の写真をすべて見る

マイルスとキャノンボールそれぞれのニューポート・ライヴ
Newport Jazz Days / Miles VS Cannonball (One And One)

 ブルーノート盤『サムシン・エルス』のコンビという言い方はまったくもって正確さを欠いたものだが、ともあれマイルスとキャノンボール・アダレイがそれぞれのグループを率いてニューポート・ジャズ・フェスティヴァル(アメリカ、ロード・アイランド州)に出演した時のライヴを合体させたもの。これが圧倒的にすばらしい。

 マイルスのこのときのライヴはすでに出ているが、今回はついに完全版しかもマスター・テープからの初登場となる。音源は「フィルモア」を主宰していたビル・グラハム所蔵のテープから。こういうテープをゴマンともっているのだから、遺族はさぞや忙しいことだろう。

 マイルス・クインテットの演奏はもはや言うことなし。冒頭の司会から最後のテーマまで一気呵成に飛ばしに飛ばす。しかし混乱も取り乱す場面もなく、終始整然と進行し、すべてが音楽的に処理される。それにしてもトニー・ウイリアムスの激烈なドラムスは何度聴いても鳥肌が立つ。ショーターの異空間を彷徨うかのようなソロもますます磨きがかかっている。こういう音源こそ公式ブートレグとして公表してほしい。

 キャノンボールのステージは、ピアノがジョー・ザヴィヌルであることを期待したが、この時代はバリー・ハリスが担当、しかしバリー・ハリスがピアノというのもそれはそれで珍しく、これは大いにアリだと思う。ルイス・ヘイズのメリハリの効いたドラムスがまことに気持ちがいい。キャノンボールは、ジャズはこうでなくてはならない。おなじみの《ワーク・ソング》も、とっくに飽きているはずなのに改めて聴くと、うーむ、やっぱりいいではないか。

 なおこのニューポート・ライヴはシリーズ化が計画されているのだろうか、ビル・エヴァンスも出ている。ベースはエディ・ゴメス、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズとエリオット・ジグモンドという2種類のトリオ。マイルスの音源が枯渇した頃合いを見計らってご紹介したいと思います。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 Gingerbread Boy
2 Footprints
3 Round Midnight
4 So What-The Theme
5 Del Sasser
6 Work Song
7 Stay On It
(1 cd)

1-4:Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (d)
1967/7/2 (Newport)

5-7:Cannonball Adderley (as) Nat Adderley (cor) Barry Harris (p) Sam Jones (b) Louis Hayes (ds)
1960/6/30 (Newport)

[AERA最新号はこちら]