アート・テイラー。毎回同じフレーズで恐縮だが、この名前をご存知のファンもまた、そうとうジャズにのめり込んでしまった方々だ。アート・ブレイキーやマックス・ローチ、そしてトニーやら、デジョネット、新しいところではポール・モチアン辺りまではリーダー名でアルバムを買える人たちだ。
と言うのも、こういう方々は単なるドラマーではなく、リーダーとしてそれぞれ個性的な音楽を提供しているので、名前から演奏内容がある程度予想できるのだ。ところで、アート・テイラーである。50年代60年代のハードバップを熱心に集めている方なら、あちこちでこの人のクレジットに気がついているかもしれないが、それでも彼の音楽性となると、ちょっと首を傾げてしまうことだろう。
そう、テイラーは典型的な脇役型ミュージシャンで、それこそブレイキーのナイアガラ・ロールのような派手派手しいことはやらないから、ブラインドで当てることもけっこう難しい。
ところで、いわゆるハードバップでは、トランペットやらサックスといったフロントが好調なときは、たとえ目立たずとも、縁の下の力持ちとしてベース、ドラムスが音楽の下支えをしているケースが多い。アート・テイラーはこうしたタイプのドラマーだと思う。だから、ハッキリ言って、彼のアルバムはお気に入りのサイドマン指名で買うのが正解だ。
たとえばこのアルバムなど、ドナルド・バードにジャッキー・マクリーン、チャーリー・ラウズ、そしてジョン・コルトレーンまで入っている。もちろん全員がいっしょにやっているわけではなく、バード、マクリーン、ラウズの3管セッションとコルトレーンのワンホーン・セッションが収録されている。
大方のファンは、コルトレーンのコンプリート・コレクションを目指す途中でこのアルバムに出会うケースが多いのではないかと思うが、その方々にとってはオマケ的な3管セッションがけっこういいのだ。アナログ時代のB面、《クバナ・チャント》から、モンクのオリジナル《オフ・マイナー》《ウェル・ユー・ニードント》へと繋がる流れはかなり気持ちがよい。
メンバーがらご想像通りの50年代ハードバップ・セッションだが、これを店でかけると、面白いようにお客様が愛想の無いジャケットを確認しに来るので、あながちキモチよがっているのは私だけではないようだ。
【収録曲一覧】
1. Batland
2. C.T.A
3. Exhibit A
4. Cubano Chant
5. Off Minor
6. Well, You Needn't
Arthur(Art )Taylor(ds) (allmusic.comへリンクします)
Jackie McLean(as)
Donald Byrd(tp)
Charlie Rouse(ts)
John Coltrane(ts)
Ray Bryant(p)
Red Garland(p)
Wendell Marshall(b)
Paul Chambers(b)
Arthur(Art )Taylor(ds)