コンプリート・サタデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター・ヴァージョン
コンプリート・サタデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター・ヴァージョン
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衝撃のフィルモア・ライヴ第2弾登場!
Complete Saturday Miles At Fillmore Multitrack Master Version (So What)

 衝撃のマルチトラック・マスター・ヴァージョン・シリーズ(長いなあ)として登場した第1弾「水曜マイルス」につづいて第2弾「土曜マイルス」がついに発売された。一般的に水曜の次は木曜と世界的に決まっているが、どうやら最大のビッグ・アイテム「木曜マイルス」は最後に出してくるようだ。うーむ、気をもたせるではないか。

 さて今回も3種類での徹底解剖連作となる。概要をお伝えすれば、今週ご紹介する1枚物に加えて、2枚組の『コンプリート・サタデイ・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター・ヴァージョン&オルタネイト・ヴァージョン:デラックス・エディション』、そして今回はなんと3枚組からなる『コンプリート・サタデイ・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター・セパレート・ヴァージョン』という豪華な陣容。それぞれのセットのどこがどうちがうのかということは以前の「水曜マイルス」をご参照願いたいが、枚数が増えたということは演奏時間が長時間化したということで、それについては追ってご紹介していきたいと思う。

 今回の最大の目玉は、以上いろいろと述べてきたが、1枚物の「土曜マイルス」ということでいいのではないか。もちろん以前にソー・ホワット・レーベルから出ていたが、音がこもり気味で、いまひとつ不鮮明かつ不透明だった。今回はそれが一掃、払拭され、ついに真のマスター・ヴァージョンとして甦った。いやこれは初登場といっても過言ではないだろう。種々のヴァージョンを入手するのも肝要だが、まずはこの「土曜マイルス」から攻めてほしい。話はそれからだ。

 約61分の死闘。とくに「土曜マイルス」はキース・ジャレットとチック・コリアがガチンコでくり広げるフリー・ジャズ的展開が大きな聴きどころだが、おお、ここまで激しかったのか。これがノーカットで、しかも最高の音で浴びられる日がやってこようとは、もう涙がチョチョ切れるではないか。とくに《ザ・マスク》のノーカット版がすごい。何度もいうが、このライヴはすでに出ている。しかし「聞こえ」が悪かった。それがすべて完全マスターで聴くことができるのだ。それを今年最大の快挙といわずして何が快挙なのだろう。来週は「土曜マイルス」のその他のアイテムをご紹介します。

【収録曲一覧】
1 Warming Up & Introduction by Bill Graham
2 Directions
3 The Mask
4 It's About That Time
5 I Fall In Love Too Easily
6 Sanctuary
7 Bitches Brew
8 Willie Nelson-The Theme
(1 cd)

Miles Davis (tp) Steve Grossman (ss, ts) Chick Corea (elp) Keith Jarrett (org) Dave Holland (b, elb) Jack DeJohnette (ds) Airto Moreira (per)

1970/6/20 (NY)