
Jimmy Heath
長年ジャズファンのみなさま方と接しているが、ジミー・ヒースの熱狂的ファンとか、コンプリート・コレクターという人はあまり聞いたことが無い。「いーぐる」でも彼のアルバムをリクエストされた記憶はあまり無い。にもかかわらず、このアルバムをかけるとジャケットを見に来るお客様がけっこういるのだ。要するに「聴いて納得のアルバム」の典型なのだろう。
M.J.Q.のベーシスト、パーシー・ヒースを兄に持ち、弟のアルバート・ヒースはドラマー。一時は3人で「ヒース・ブラザース」というグループを結成していたこともある。要するにジャズ界ではそれなりに名の知れたテナー奏者なのだが、「これ1枚」というヒット作に恵まれなかった。
もちろん、かつての名盤紹介本などには60年代の彼の代表作とされる『スワンプ・シード』(Riverside)が必ず掲載されていたが、フレンチホルン、チューバなどを取り入れ、彼の作編曲の才を生かしたアルバム構成が、かえってハードバップ・ファンにはいまひとつピンとこなかったのではなかろうか。
そんな中、70年代ハードバップ・リヴァイバルの流れに乗って出されたこのアルバムは、彼のサックス奏者の実力をストレートに発揮させたワンホーン作品で、ゴリゴリ・ハードバップ・マニアも納得の仕上がりとなっている。
にもかかわらずの認知度の低さは、ザナドゥという若干マニアックなレーベルと、モノクロ写真の渋すぎるジャケット・デザインにあると思う。同じモノクロでも、ブルーノートのハイセンスとはえらい違いだ。
内容に戻れば、チェット・ベイカーとアート・ペッパーの名盤『プレイボーイズ』(Pacific Jazz)の目玉曲、ヒース作の《フォー・ミュージシャンズ・オンリー》が素晴らしい。マイナーな曲調の哀愁感がヒースの腰の据わったテナーから切々と繰り出されたところで、必ずお客様の目線がジャケットに注がれるという塩梅だ。サイドもいい。当時絶好調のバリー・ハリスと、この手の演奏に欠かせないメリハリの効いたドラミングをビリー・ヒギンスがガッチリと提供している。
【収録曲一覧】
1. For Minors Only
2. Body And Soul
3. Picture Of Heath
4. Bruh' Slim
5. All Members
6. CTA