まるで、絵の中から飛び出してきたかのようなミシュランのキャラクターのビバンダム。一見、ツリーハウスのようにも見える盆栽。この独創的なオブジェは、空間プロデューサーの相羽高徳さん(61)が描く、空想世界だ。
新横浜ラーメン博物館や箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアムなど数々のヒット施設を手がけてきた、相羽さんの描いた原画を、模型士の村上和也さんが形にした。
これまでに模型化されたのは、2003年から11年までに描かれた、八つの作品。ビバンダムの62センチ(台の高さは除く)から、盆栽シリーズの30センチ前後と大きさはさまざま。いずれも中に人が住んでいるかと錯覚するほどの緻密さで、一つ完成させるのに長いものでは1年半、短いものでも1カ月かかる。
11年の個展で初めて披露され、翌年にはツイッターなどを中心に話題に。海外の有名映画俳優や実業家などからも作品の引き合いがあったという。現在、新たに6体の模型を作製中で来年ごろには完成する予定だ。
模型のクオリティーもさることながら、多くの人を魅了するのが相羽さんが描く世界観だ。
作品には、自身の幼少期の原体験が影響している。
「小学生のころ盆栽に夢中でした。盆栽を見ているうちに、自分が小人になり、その中を自由に動き回っている、そんな想像をして遊んでいて。当時は、盆栽こそがミニチュア世界の究極だと思っていましたね。この発想が今の作品づくりの原点になっています」(相羽さん)
遊びを通して生まれた自分だけの小宇宙。相羽さんは想像の力で縦横に羽ばたき、独自の世界観へと昇華させた。
「『空想』というフェイクの空間だからこそ、人を感動させるものを創ることができる」
追求するのは、見る人の想像を遥かに超えた異世界だ。
※週刊朝日 2015年5月1日号