担当判事が昨年5月に大飯原発運転差し止め判決(関電控訴で高裁審理中)を出した樋口英明裁判長だったからだ。担当判事が昨年5月に大飯原発運転差し止め判決(関電控訴で高裁審理中)を出した樋口英明裁判長だったからだ。

「福井地裁は規模が小さく、民事部の裁判長は樋口氏しかいない」(申し立て弁護団)

 このため福井地裁に仮処分を申し立てれば、昨年の差し止め判決とそう違わない決定が出るだろうと見越していたのだ。

 樋口氏は審尋を2回で打ち切り、最後となった3月11日には関電の意見書提出を認めずに結審。4月から名古屋家裁の総括判事に異動したが、裁判所法に基づく職務代行辞令を利用して、自分で決定を出すことにこだわった。

 高浜原発3、4号機は川内原発と並んで再稼働一番手と目されていた。

 今後、動かすためには、関電が不服申し立てをしたうえで仮処分を覆すか、本訴の提起が必要となる。

 関電は4月17日に福井地裁に仮処分の取り消しを求める保全異議と執行停止を申し立てたが、結果が出るまでには1年程度が必要になるとされる。

 今秋に想定していた再稼働は、ずれ込むことがほぼ確実になった。

 判決を受けて“原子力ムラ”にも焦りが広がっているようだ。

 関電関係者も決定へのいら立ちを隠さなかった。

「樋口裁判長だけはどうにもならない。答えは最初から決まっていた。訴えた側がうまかった。2回で審尋を終えた樋口裁判長に対し、うちは忌避を申し立てたが、認められない。この時点で負けは決まった。4月に樋口裁判長が異動で飛ばされることが決まったので、うちの幹部はひょっとしてと期待したが、代行で判断を言い渡した。うちがどうあがいても勝てない仕組みになっていた。姑息な裁判だ。福井地裁だけは、どうにもなりません。それこそ、経産省と法務省で話し合ってほしいですよ。安全対策をこれ以上ガチガチにやったら、電力事業では利益をあげられない」

 世界有数の原発密集地(14基)の福井県で歴史を変える判決が出たのは、決して偶然ではない。原告弁護団が練りに練った戦略だった。

週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋