オール・バイ・マイセルフ/スー・レイニー
オール・バイ・マイセルフ/スー・レイニー
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 皆さんは、なんらかの再生装置をお使いになってジャズを聴き、そして、いいなあと思って、ジャズが好きになったはずである。もしかしたら、その再生装置は、昔から使っている古いコンポだったり、さほど高級でないラジカセだったりするかもしれない。

 いや、なにもそれにケチをつけようっていうんじゃない。実際に、その装置でジャズが好きになったんなら、きっとステキな音がしていたに違いない。これは偽りない本心であります。

 たいした投資はしてないが、それでも機嫌よくジャズを楽しめていた。ある日、突然機械の調子が悪くなる。CDを読まなくなったり、音が出なくなったり、あるいは、スイッチを入れても、ウンともスンともいわなくなったり。

 永らく大事に使ってきたコンポも、いよいよ天寿を全うするときがきた。いままでありがとうと礼を言いつつ、新しいコンポをどうするか、カタログなど眺め思案をはじめる。

 今まで使ってたのが安かったものだから、贅沢は言わない。同じ位の予算か、もう少し上乗せしてもいいけれど、今までと同じ程度の音質であれば文句なしだ。

 じゅうぶんに下調べして、予算に合うものを選び、ねんのために大型電気量販店で試聴もしてみるが、音が良いのか悪いのか、よくわからない。まあ大丈夫だろうと買って帰って、いざ音を聴いてみると、どうも期待したような音じゃない。新製品だからか、やたら元気は良いが、しばらく聴いていると耳がじーんとして疲れてくる。

 まさか、そんな…。壊れたコンポより高価だし、デジタル技術は数年前より格段に進化してるはずだから、音がそれより悪くなるなんてありえないだろ!

 いや、オーディオマニアじゃないから、音が良くないのはかまわない。だが、いままで楽しめていたCDが、楽しく聴けなくなるなんて、ジャズファンとして堪え難い。

 あの『お風呂のレイニー』で、切々と歌い上げる「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」が、「ハウ・アバウト・ミー」が、まるで胸に迫ってこない!

 かといって、何十万も何百万もオーディオにかける予算はないし、もしかけたとしても、僕のスーちゃんが戻ってくる保証なんて、どこにもないではないか。いったいどうすればいいのだ!?

 いままで気に入った音で満足していた環境から、買い替えを機に、オーディオ機器の大海原に放り出されるわけである。「自分はオーディオマニアじゃないから、音質にはこだわらない」そう思っていたのが、いざ満足な音が出ないとなると、ものすごくこだわってしまう自分を発見する。限られた予算と、無限にある機器の組み合わせから、自分が求める音を探し出すのは至難の業。途方に暮れる貴方に、マント翻してわたしは言おう。だから言ったじゃないの、音も音楽のうちなのよ。

【収録曲一覧】
1. Some of These Days
2. Trouble Is a Man
3. Don't Let the Sun Catch You Crying
4. I'm Gonna Laugh You Right Out of My Life
5. Here's That Rainy Day
6. What Is This Thing Called Love
7. All by Myself
8. No Place to Go
9. Just A-Sittin' and A-Rockin'
10. How About Me
11. Maybe You'll Be There
12. Burnt Sugar

Sue Raney (vo),Ralph Carmichael (arr,cond)

[Capitol] 1963.