内政では保守vs.進歩の対立はさらに深まり、消費低迷で内需を圧迫。頼みの財閥にも陰りが見え始めた韓国。日本、さらに米国、中国との外交までも行き詰まっている韓国の今を、ノンフィクションライターの菅野朋子が探った──。
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深刻な消費低迷に、昨年7月には、大統領の側近といわれる経済通の崔ギョ煥(チェギョファン)氏が経済副首相に抜擢され、新しい経済チームが発足した。「輸出依存」から「国内需要の拡大」という景気浮揚策をぶち上げ、この政策は名字からチョイノミクスともて囃されたが、
「不動産市場は活気をとり戻したといわれるが、内情は家計の借金で持ちこたえているようなもの。家計負債は膨れ上がっていつ爆発するかわからない状況になっている」(韓国全国紙記者)
40代の主婦もこう言ってため息をついた。
「不動産を購入するときの借り入れ規制を緩和するなんて謳ってますけど、実際はアパート(マンション)の伝貰(チョンセ・賃貸で入居する際に払う保証金で退去時に払い戻される仕組みになっている)が高騰していて分譲価格と同じくらいになっているところもある。子供の教育のために、いい塾が集まる住みたい地域は特にそうだし、だから、家を買うためにではなくて借りるために借金しなきゃいけない。子供の教育費もかさむ一方で、節約、節約です」
韓国ではエデュプア(エデュケーション=教育+プア=貧困)という言葉が生まれるほど、家計における教育費の負担率は高く、世界でも2番目で、OECD平均も大きく上回る水準だ(OECD調べ)。そんな後押しもあり大学進学率は70%(13年)を誇るが、90年代後半の通貨危機以降、名門大卒=就職は安泰という風潮は消え、博士号までとっても就職がままならない状況が続いている。昨年の青年失業率も前年比1ポイント上昇の9%で、30歳までの非正規社員の割合はここ10年ほど減る気配はなく、こちらも深刻な問題になっている。